短編

□うさぎとかめ
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うさぎとかめ





「ねぇ、ほんっととろくさいよね、おまえって」

クラスの人気者、快兎(かいと)くんは僕の目の前に毎日やってきては、そうやって言ってくるんだ。
他の人にはそういうことは言わないのに、なんでだろう?といつも思う。
それに、全然悪気があるようには見えないし、僕も指摘されて直すべきところだなぁ〜っておもうから、言ってもらえてすごく嬉しい。

「うん〜マイペースってよくいわれる、よ?」

僕はへらへらと笑って毎回言い慣れてしまった同じ言葉を返す。その言葉に呆れちゃうのか快兎くんはいつも自分の席に戻っちゃうんだけど…

「あったまわるいなーどうしてもっと違うこといえないわけ?」

ちがうこと?

「もっとさー…」

そういいかけたところで快兎くんは、いつもかっこよくってきれいな顔をまっかにしたものだから、僕は驚いてしまった。

「べ、べつに、もっと違うこと喋りたいとかじゃ、ない、ぞ!」

「??????」

「いや!あ…ち、ちがう!いまのはちがうからな!」

快兎くんは、わたわたと焦って何かを弁解しようと一生懸命だった。僕は全然意味が汲み取れなくて、ちがうの?しゃべりたい?だれと?って頭の中で快兎くんが言ったことを反芻していた。

そして、よくわかってないのが、快兎くんにも伝わったのか

「………………ほんと…とろい…」

と言って、快兎くんは席にもどってしまった。

また、がっかりさせてしまっただろうか?

快兎くんは、僕の憧れの人。
もっともっと仲良しになれたらいいのになぁ


end.

(2010.03.07)

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