短編

□うさぎとかめ
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また快兎くんが僕のそばにきて、毎日の台詞を不機嫌そうに舌にのせる。

ぅうん…どうしたらなかよくなれるのかな?どうしたら、笑ってくれるかな?

僕は最近ずっと快兎くんのことを考えていた。

もっともっとなかよくなりたいんだ

だから。

僕は席に戻ろうとする快兎くんの制服の端をひっぱって勇気を振り絞って、訴えたんだ。

「快兎くん…ぼくとなかよくして?」

って。

そうしたら、快兎は一瞬固まってしまったなあと僕が思っている間に顔を真っ赤にさせて、ばかじゃないの!って手を振り払われた。

そっけない態度はいつもされているはずなのに、僕はそのときものすごく胸がいたくなって、走って教室を出て行ってしまった快兎くんを、ぼんやりした視界でみつめることしかできなかった。

それから快兎くんは次の授業も次の授業も出てこなかった。

そのあいだずっとずっと胸がいたくてしょうがなかった。

放課後の教室で僕は、またぼんやりと快兎くんが出て行った扉に目をやると。

ぽろり。

とろい。おそい。

ぼろぼろぼろぼろ

僕はやっとそこで気付いた。

快兎くんに嫌われているんだ、と。

そうしたら、すごくすごく悲しくなってしまった。

おかしいな。

そんなの…他の人には言われていたのに…
本当は、気付きたくなかった。

それは目を背けたかった事実。

end.

(2010.03.18)

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