想像のままに書いちゃおう!!

□フェイク
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「晋助!」

夜の冷たい春風を感じながら木の根元で煙管を吸っていると、後ろから呼ばれた。

「なんだ。泰造、お前か」

片目で俺を呼んだ者の顔を見る。

「なんだって何だよ。居ると思ったところに居なかったから、探したんだぞ!」

俺とは違う豊かな表情は今は怒りで、眉間にシワが寄っている。

「またシワが増えるぞ」

「うるさい!そんな事より、戻らなくていいの?」

泰造は俺の隣に座り聞いてきた。

「めんどくせ。あんなもん万斎(奴)に任せておけばいい」

「大切な取引なんじゃないのか?」

少し離れた場所にある小屋で、ある取引がされている。

内容はもう忘れちまったが、こいつが言うように大切な取引だったような気がする。

相手はどこぞかのお偉方だということを万斎が言っていたような気がしないでもない。

「どれも曖昧だな。年か?」

「お前に言われたくねぇよ。それより、お前なんで此処にいんだ?俺は外に出るなって言ったよな」

俺が聞けば泰造は一瞬固まる。

いつも泰造には独りで外に出るなと言っている。

俺たちに関わろうとしてくる輩はいつ裏切るか分からない。

ま、はなっから信用なんかしちゃいねぇが、いつ命を奪われるか分かったもんじゃねぇ。

だから俺達の中でも一番弱い泰造には勝手に行動するなと言っているが、……守った事は一度もない。

そして何故守らない、と聞けば、

「いいだろ?もしもの時は晋助がいるし、大丈夫!」

と訳の分からない自信を持って返事が返ってくる。

『もしもの時』には遅いだろ…。

煙管を吹かしながら共に溜め息をつく。

「あ!そうだ。酒持ってきたんだ。晋助も飲むだろ?」

自分の後ろから酒のビンと、お猪口を2つ出してきて笑いかける。

コイツはいつも笑顔を向ける。

昨日も一昨日も今も。

だが、何時かは見せなくなる。

全てを思い出せば…。

俺がした事を絶対に許しはしないだろう。
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