リクエスト
□甘えられる日
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ふん、ふん、ふん、しかのふん〜♪
鼻歌を歌いながら歩きなれた道を歩いていた。
向かう先は長谷川さんの家。
久しぶりにパチンコで勝った俺は、酒を片手に長谷川さんの家に向かっていた。
「はっせがわさーーーん!!」
チャイムの代わりに大きな声で長谷川さんを呼ぶ。
…………………。
あれ?
返事がない?
居ないのかな?
不思議に思いながらも靴を脱いで部屋の中に入った。
不法侵入ではないよ。
声出したし。
俺、夫だから。
すると玄関から見える、奥の部屋に一組のせんべい布団がひかれていた。
昼もとっくのとうに回った時間だというのに、長谷川さんは寝ていた。
「長谷川さん?」
声を掛けても、うんともすんとも無い。
「お〜い、長谷川さん」
もう一度声を掛けても長谷川さんは起きる気配がまったくなかった。
俺は持っていた酒をテーブルの上に置いて、そっと覗いてみる。
長谷川さんは相変わらず寝ていた。
でも、様子がおかしい。
頬は赤く、息が荒い。
額からは汗が尋常じゃないくらい溢れている。
……なんか、いろぽーい…。
いやいやいやいや!!
何言ってんだ、俺!!!
完全にこれ病気だよね?
長谷川さん風邪ひいちゃってるよね?
なのに俺何言っちゃってるの!!
我慢しろよ、俺の息子よ!!
よし、まずは看病するために準備をしよう。
起きたらきっと喉渇いてるだろうし、飯食わせて薬も、薬どこにあんだ?
引き出しという引き出しを開けて薬を探していると、布がもぞもぞと動いた。
「…ぎん、さん?」
虚ろな目で俺を捕らえた長谷川さんは、何でも居るの?、と言うように俺の名前を呼んだ。
「あ、起きた?体の具合はどう?」
長谷川さんの近くに行き、聞く。
起こした体はゆらゆらと揺れていて、時々倒れそうになっていた。
「…くらくらする…」
長谷川さんは呟くように答える。
言葉を発するのも辛いようだ。