リクエスト

□甘えられる日
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「どれ、熱は?」

長谷川さんの額に手を当てて熱を計る。

「きもちぃ…」

長谷川さんが目を閉じて、これまた呟くように言った。

うわ〜。

今日の長谷川さん可愛い…。

いや、毎日可愛いと感じてるけど、今日は何十倍にも増して可愛い。

「相当熱あるね。今何か欲しいものある?」

そう聞くと、俺の方を焦点の合わない目で見上げて、水、と答えた。

潤んだ上目遣いヤバい!

俺の息子にダイレクトアタックですよ〜!

俺は立ち上がって流し台に行き、コップに水を入れて持っていく。

「はい。自分で飲める?」

自分の力で座っていられない長谷川さんの背中に腕を回し、支えながら水を飲ませる。

普段なら、

『自分で飲めるよ!』

、と言う長谷川さんが今素直に飲んでくれている。

素直な長谷川さん、良いな。

と思っていると、水を半分ぐらい飲んだ頃、長谷川さんが僅かに後ろに顔をやったからすぐにコップを口から離した。

「ありがと…」

ふんわりと笑って礼を言う長谷川さんはめちゃくちゃ可愛い。

あぁ、今カメラが無いのが惜しい!

「他に何かないか?飯は食べた?」

長谷川さんを布団に寝かせて聞けば、う〜ん、と少し考える長谷川さん。

「そういえば、朝から何も食べてないかも…」

「それ駄目じゃん。ちょっと待ってな。今作ってくっから」

また流しに行き、冷蔵庫の中を見た。

おいおい、これヤバいんじゃないの?

夫としてこの冷蔵庫の中は心配になるんだけど。

長谷川さんの冷蔵庫はがらーんとしていて、唯一卵が一個あったくらいだった。

卵を手に取り、冷蔵庫の扉を閉めて、次は炊飯器の中を見る。

炊飯器の中にはまだ温かい米があったから俺はお粥を作ることにした。

「長谷川さん起きてる?お粥できたよ」

鍋敷きの代わりに新聞紙を床に置いて、その上にお粥の入った鍋を置く。

茶碗にお粥をよそっていると、長谷川さんが起き出した。

「あ、あぁ…。ありがと…」

起きあがるのも辛そうにしている長谷川さんに手を貸して、起こす。

「ふー、ふー、はい、あーん」

少量をスプーンに乗せて、冷ませてから長谷川さんの口に持っていくと、ボーっとしている長谷川さんは少し間を置いて、口を開けた。
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