書庫

□秘密の恋人
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まだ寒さが身に染みる灰色の空の下、コンコンと軽く扉を叩く音が広々とした部屋に響いた。

「どうぞ。」

この部屋の主である大佐は山積みになっている書類に溜息を漏らしつつも、走らせるペンを止めることなく返事をする。

「失礼します。大佐、この書類にチェックをお願いします。」

そう言って敬礼をし、入って来たのは彼の直属の優秀な部下であるガルル中尉。ガルルは大佐が書類に追われているのを気遣い、遠慮気味に書類を手渡す。だがそこでガルルは手を離すことなく、頭の上に?マークを浮かべる大佐をどこか必死そうにじぃっと見つめた。

「あの大佐、ゾルル兵長を見ていませんか?」

「いや。今日はココから出ていなくてね・・・。」

大佐は依然としてデスクに高くそびえ立つ書類を苦笑しながら指差す。

「そうでしたか、お疲れ様です。では。」

ガルルが再び敬礼をして扉に向かって踵を返したと同時に大佐はペンをデスクに置いて、座っている椅子をクルリと回転させて大きく開けた窓から地上を見下ろす。

「・・・・もうすっかり春だな。」

「?」
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