書庫
□IceCocoa
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IceCocoa
頑張ってる貴方に
「おいガルル!!テメェ今度こそ・・・」
クルルはノックをする事も、声をかける事もせずにずかずかと部屋に入ると、苛ついた声色で自分の護衛官兼補佐官であるガルルの名を叫んだ。手に乱暴に持っていた書類はぐしゃぐしゃに皺が入ってしまっていた。
「ぅあ?」
が、目に飛び込んできた余りにも素っ頓狂な光景に怒りは鎮まり、代わりにみっともない声だけが漏れた。
普段から何かと真面目すぎるガルルは今日も変わらず自分のデスクに居るのだが・・・・。
(コイツ、寝てやがる・・・・!!!)
この日ばかりは、書きかけの書類を下敷きにして机上に突っ伏して寝ていた。
見なれない光景に少し戸惑いつつも、寝ている副官の側まで歩いてみる。
クルルの護衛・補佐を務めていても、他の仕事が勿論ガルルにも回ってくる。護衛も補佐も立派な仕事では有るが、ケロン軍もそんなに優しくはない。時にはクルルを残して前線に派遣される事もあったくらいだ。精度の高い狙撃手であると共にデスクワークも難なく処理できるガルルは、まだ伍長ながらケロン軍にとっても存在は大きい。
売れっ子スナイパーは大変だねぇ。相手が聞いていないのを良い事に、まぁクルルに聞いてるとか関係ないのだが・・・・そんな皮肉を言いながら、デスクの上に束になって置かれている書類の一番上に置かれた1枚を手にとった。
(ってコレ、前に俺が実験で派手に研究棟ぶっ壊した時の始末書じゃねぇか。)
「伍長さんよ。」
声をかけてみるが、反応は無い。いつもなら、どんなに小さな音にだって反応するのだが。クルルは特に興味が沸かなかったが、兄弟揃って地獄耳だとかどうとか・・・。
(まだ寝てやがる・・・・。上司が俺じゃなかったら本当に降格モンだぞ。)
「ちっ」
思い出したかのように舞い戻って来たイライラを大きな舌打ちで発散して、一度部屋から出た。