過去捏造部屋
□Prologue
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コンコン。
「俺〜。」
たった一言を気だるそうに発しながら、所有者に断る事も無くズカズカ否ピコピコと音をたてて部屋の中を進んでいくまだ尻尾がついた黄色いケロン軍人。
「クルル少佐。ノックをした事は褒めてあげよう。ただなぁ、断りも無しに上司の執務室に入って来るか?ガルル伍長に何度も教えてもらっている筈だったが・・・。」
所有者である中佐は溜息をついた。クルルは、つい先日まではノックさえしなかった。クルルは殆どの大人の言う事を聞こうとしない。ただ唯一、世話係を任されているガルルの言う事には多少なりと耳を貸す。しかし、まだ幼い事を理由にあまり彼を責め立てる者は居なかった。
「で、何の用だ?」
「俺の出生の話・・・・あれ嘘だろ。」
沈黙が続く。
「・・・・伍長から聞いたか、また軍のコンピュータにハッキングでもしたのか?」
「どっちもハズレ。ただ何となく、そんな気がしてな。」
中佐はそうか と言ってきり黙りこんだがクルルに動きが全く見られないどころか備品のソファに腰掛けて、中佐の話を聞く気満々の様子をみて、渋々ながら口を開いた。
「・・・知りたいか?」
「知りたく無かったら、アンタん所なんかに来ねぇよ。」
「いずれかは話さなければならない事だ。・・・・後悔しないな?」
クルルは無言で頷いた。
中佐はペンの動きを止めて椅子から立ち上がり、大きな窓から見える景色をぼんやりと見つめながら話し始めた。
「あれは、お前がまだ生まれて間もない頃の事だった・・・・・。」