過去捏造部屋

□EpisordT
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陽光を遮断し、人工的な光の連なる通路を進む白衣の女性軍人。

その胸には、まだ言葉も話せないであろう子供を大事に抱えている。

通路の一番奥にある第12実験室の前まで来ると、足を止めてロックを解除する。



「異常は無い?」



扉が開くとほぼ同時に彼女は中にいる男性のケロン人に声をかけた。彼もまた軍人だ。



「あぁ、至って順調だよ。あの一族からやっとの事で手に入れた貴重な材料なんだ・・・。」





そうして二人が見つめる先には何メートルもある巨大ポットがあった。

気味悪く緑に光る液体の中には1頭の獣がいた。一見すると犬や狼のような容姿だったが、その朱い身体からは死神さえも連想させられる真っ黒な翼が生えている。

「あと少しね。あと少しでこの子は全てを焼き払う侵略兵器に生まれ変わるわ。さぁクルル、私たち夫婦の研究結果を貴方も一緒に・・・。」

女性の軍人は抱き抱えている我が子の顔を獣へと向けさせた。





ゴポッ

音を立てて緑の液体に無数の気泡が浮かんだ。





「目覚めた・・・!!」

朱い獣はゆっくりと目を開ける。

そして己の身体の変化に気付く。もともと、その背中に翼など生えてはいなかった。

「お前達・・・一体何をしたっ?!」

獣は黄金に輝く瞳を見開き、彼らに問い掛けた というよりテレパシーのような物で、彼らの脳に直接話しかけているのだ。

「『火の神』である貴方に我がケロン軍の新たな侵略者となってもらうのよ。」

「話が違う。俺は軍の侵略兵器なんかに成るためにお前らにに協力したんじゃ無い!!!」

獣は怒りに身を任せ、ポットの中で尻尾や頭を振り乱す。辺りが振動で揺れ、試験管がカタカタと音をたてた。

ポットに軽い亀裂が入ったものの、割れる事はなかった。

「そうだね。だけど残念ながら彼方はもう戻る事は出来ない。解っているんだろう?あと、君は大切な物なんだ。あまり傷着けないでくれよ?」

男性の軍人がまだ暴れようとする獣に向って話しかけた。

「だけど安心して。時間が経てば自我も失くなるわ。貴方は完璧になれる。」

「ふざけるな・・・・!!!侵略兵器になるくらいなら死んだ方がマシだ!!」

「ふふふ・・死なせないわ。」

彼女は意味深な笑みを浮かべた。だが、それは獣も同じだった。

「そうか?軍はカタブツだからな、研究員を殺した俺が生きたままの確保が無理だと分かったら直ぐ殺してくれるさ。」

そうしてさっき以上の力でポットに身体を打ち衝ける。すると、ポットには更に細かい亀裂が入り液体が僅かに零れ始めた。そうなれば止める事は出来なかった。

勢いをつけた液体は脆くなったポットを思いっきり突き破った。





ガッシャアアアアアアン!!!!!





割れて粉々になり雪のような特殊ガラスと緑の液体が降り注ぐ。

「神に手を出した事、死を持って悔いるが良い!」









「緊急警報!!地下・第12実験室から実験体が逃亡!!現在2名の死亡を確認。捕獲か、さもなくば殺すように!!」

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