Mine thing

□羽
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「……ない……」

冬休みに入って、4日目。
今年もう終わりに近付いている。

部屋の大掃除と共に、私は或る物を探していた。
決して無くしてはいけない物。
なのに無くしてしまった私。

どうしても見つけ出したくて
部屋中を漁っていたら、大掃除と変わりない姿になってしまった。
…いや、この惨状は大掃除より酷いかもしれない。

「終業式の日まではあったんだけどなぁ…」

どこにこんなに物があったのか、自分でも信じられない位。
収納されていた場所に全部戻せるか不安になってきたなぁ…。

「仕方が無い、戻しながらもう1度見てみよう」

ペタンと部屋のど真ん中に根を張っていた腰を立ち上がらせる。

ガチャッ

その時、唐突にドアが開かれる。
…寮の中で、ノックしないで入ってくる人物といえば1人しかいない。

「奈津子、遊びに…。うぉっ!何だこの部屋!!」

「佑、部屋に入るときはノックしてって言ってるでしょ」

「おぉ、悪い悪い。…大掃除中か?」

多分、普段の部屋と比べているのだろう。
いつもと違って、今日は私が座っている場所以外は
どこもかしこも、物で溢れきっている。

「う、うん」

私はそんな部屋を見られたことに羞恥心を覚えながらも返事をする。

「そっかー。なら仕方ねぇな」

「どうしたの?」

「いや、折角の冬休みだから遊びに行かねぇかと思ったんだけど…」

私の部屋を見回して、これじゃ無理だなと
ニッコリ笑顔で返してくる。
確かにこの部屋では、何を言っても説得力は皆無だと思う…。

「じゃあ、また今度な!」

「あ、待って!佑!」

私はドアを閉めようとした佑を引き止める。
佑はキョトンとした顔で、再びドアを少し開く。

「あの…探し物してるんだけど…知らないかな?」

「はぁ…やっぱり佑は知らなかったか…」

それも当然だと思う。
だってそれを身に着けていたことすら
彼は気付いていなかったのだ…。

何としても、彼が気が付くまでには見つけなければならない…。

部屋の片付けをそこそこに、私は食堂に降りてくる。
口から漏れるのは溜息ばかり…。

「部屋に無いとなると…食堂かな?」

梅さんのお手伝いをしているときに
どこかに置いたのかもしれない…。

「梅さ〜ん…」

「梅ちゃんなら買い物に行ったよ?」

食堂では日向ぼっこをしながら雑誌を読んでいる晃がいた。

「あ…そうなんだ…」

「どうかした?」

「ううん、なんでもないよ」

梅さんが帰ってきたら、聞くしかないか…。
でもその頃にはきっと、彼も食堂にいるはず…。

「気分落ちてるみたいだね?」

「えっ?そう?」

「彼と喧嘩でもした?」

喧嘩≠ニいう単語にドキッとする。
何で、晃はこうも鋭いんだろう。

「喧嘩なんてしてないよ」

そう微笑って晃に返すけど
もしかしたら…ううん…確実に喧嘩になるようなことを私はしてしまった。
これからのことを思うと気落ちする。
それが顔に出ていたのかもしれない。

「俺の勘って滅多に外れないんだけどねぇ?」

流し目で私を見る晃。
ウッと私は顔が赤くなる。
全てを話さなくてはいけない気がしてくる。

…そういえば、昨日晃は梅さんと一緒に
食堂の掃除をしてなかったっけ…?

もしかしたら晃はアレのことを言ってるのかもしれないな…。

「悩み事があるなら俺に話してみない?」

…結局、晃の誘導尋問的な流れに負けて
私は或る物の存在の場所有無を聞いてみた。

「あのね…探し物してるんだけど…」
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