clap SS(過去分)
□【 Le diable tender2 】
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『先生・・・・ところであたし、卒業したのに引越し先決まってないんですけど?』
「任せておけって言ったろう?」
『はい、それは聞きましたけど・・・・・でも新入生も引っ越してき始めてますし・・・・』
「荷物はまとめてあるのか?」
『それは勿論ですよ。いつ出てもいいようにしてありますけど』
亮、佑、晃が一番初めにここを出て行って、2日あけて零と啓一朗がいなくなった。
残ってるのはあたしだけ・・・・・。
「よし、じゃあ明日はちょうど日曜だ。お前の引越しをするか」
『え?でもどこに・・・・』
「行けば分かる・・・・・・・」
翌日の日曜は晴曇り。
でも引越しには最適な気温。
家具は備え付けのものだったし、持って行くのは私物と衣類、モバイルPCと本に周辺機器・・・・・。
だから先生の借りてきた4駆で、充分事足りる量しかない。
『じゃ、梅さん。永い間お世話になりました。また遊びに来ますね』
「ええ、いつでもいらっしゃい!っていうか、いつでも会えると思うけどw」
『?はい、じゃあまた・・・・』
梅さんに挨拶すると、車に乗り込む。
「じゃあ、行くぞ」
『はい!』
着いたところは・・・・・・・真新しいマンション。
『・・・・ここは?』
「これからお前が住むところだ。とりあえず運ぶぞ?」
『あ、はい』
持てるだけ荷物を持って、先生の後についていく。
エレベーターが止まったのは、最上階。
その一番奥まった、突き当りの部屋へ向かう。
「ほら、入れ・・・・・」
『は〜い・・・・・・って、ええ?ここって・・・・・』
「お前のために広い部屋に引っ越してやったんだ・・・・ありがたく思え・・・・・」
『ええっ!?・・・・っていうことは、あたしは先生と一緒に住むってことですか!?』
「それ以外に何処に住むっていうんだ?ついでに、先生はやめろ。俺には由紀って名前がある」
絶句・・・・・・・。
言葉がまったく出てこない。
呆然としてるうちに、先生がどんどん荷物を運んでくる。
といっても、そんなにはなかったんだけど。
「まあ、一緒に住んでれば・・・・お前も慣れるだろ。気にすんな」
『気にしますってば!』
でもここを出たからといって行く当てもないし、いるしかなかったけど・・・・確かに割とすぐに慣れてしまった気がする。
呼び名が先生から由紀に変わったことも・・・・結構あっさり慣れてしまった気がする。
「そういえばお前、ピアスホールをあけたいんじゃなかったのか?」
『あ、そうでした。あけてくださいよ』
「ああ、いつでもいいぞ」
『痛くしないでくださいよ?』
「当たり前だ・・・・」
その日の夜、由紀にピアスホールをあけてもらった。
『・・・・!』
耳朶に触れる由紀の手に、心臓が飛び出そうだった。
ちくっとした痛みのすぐ後に、暖かくて柔らかいものを感じた。
『ちょ・・・・何してるんですか!』
「・・・・消毒だ・・・・・・」
消毒と称して、少しの出血を由紀の舌が舐め取った感触だった。
「ほら、ピアスもつけてやる・・・・」
つけてもらったピアスを鏡で確認すると、以前広告で見たことのあるバラのモチーフのピンクの石。
『あ・・・・これって・・・・・・』
「・・・・こっちもあるぞ・・・・・」
そう言って背後からあたしを抱きかかえるように座ると、左手をおもむろに取った。
そしてはめられたのは、あの時のバラの指輪。
「これでお前は、俺のもんだ・・・・・」
一生、手放してなんかやらねぇからな・・・・・・そう言ってあたしのあごを掴むと、強引で優しいキスをした・・・・・・。
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