clap SS(過去分)

□【 Le diable tender2 】
1ページ/1ページ


---


『先生・・・・ところであたし、卒業したのに引越し先決まってないんですけど?』

「任せておけって言ったろう?」

『はい、それは聞きましたけど・・・・・でも新入生も引っ越してき始めてますし・・・・』

「荷物はまとめてあるのか?」

『それは勿論ですよ。いつ出てもいいようにしてありますけど』

亮、佑、晃が一番初めにここを出て行って、2日あけて零と啓一朗がいなくなった。

残ってるのはあたしだけ・・・・・。

「よし、じゃあ明日はちょうど日曜だ。お前の引越しをするか」

『え?でもどこに・・・・』

「行けば分かる・・・・・・・」



翌日の日曜は晴曇り。

でも引越しには最適な気温。

家具は備え付けのものだったし、持って行くのは私物と衣類、モバイルPCと本に周辺機器・・・・・。

だから先生の借りてきた4駆で、充分事足りる量しかない。

『じゃ、梅さん。永い間お世話になりました。また遊びに来ますね』

「ええ、いつでもいらっしゃい!っていうか、いつでも会えると思うけどw」

『?はい、じゃあまた・・・・』

梅さんに挨拶すると、車に乗り込む。

「じゃあ、行くぞ」

『はい!』




着いたところは・・・・・・・真新しいマンション。

『・・・・ここは?』

「これからお前が住むところだ。とりあえず運ぶぞ?」

『あ、はい』

持てるだけ荷物を持って、先生の後についていく。

エレベーターが止まったのは、最上階。

その一番奥まった、突き当りの部屋へ向かう。

「ほら、入れ・・・・・」

『は〜い・・・・・・って、ええ?ここって・・・・・』

「お前のために広い部屋に引っ越してやったんだ・・・・ありがたく思え・・・・・」

『ええっ!?・・・・っていうことは、あたしは先生と一緒に住むってことですか!?』

「それ以外に何処に住むっていうんだ?ついでに、先生はやめろ。俺には由紀って名前がある」

絶句・・・・・・・。

言葉がまったく出てこない。

呆然としてるうちに、先生がどんどん荷物を運んでくる。

といっても、そんなにはなかったんだけど。

「まあ、一緒に住んでれば・・・・お前も慣れるだろ。気にすんな」

『気にしますってば!』

でもここを出たからといって行く当てもないし、いるしかなかったけど・・・・確かに割とすぐに慣れてしまった気がする。

呼び名が先生から由紀に変わったことも・・・・結構あっさり慣れてしまった気がする。

「そういえばお前、ピアスホールをあけたいんじゃなかったのか?」

『あ、そうでした。あけてくださいよ』

「ああ、いつでもいいぞ」

『痛くしないでくださいよ?』

「当たり前だ・・・・」

その日の夜、由紀にピアスホールをあけてもらった。

『・・・・!』

耳朶に触れる由紀の手に、心臓が飛び出そうだった。

ちくっとした痛みのすぐ後に、暖かくて柔らかいものを感じた。

『ちょ・・・・何してるんですか!』

「・・・・消毒だ・・・・・・」

消毒と称して、少しの出血を由紀の舌が舐め取った感触だった。

「ほら、ピアスもつけてやる・・・・」

つけてもらったピアスを鏡で確認すると、以前広告で見たことのあるバラのモチーフのピンクの石。

『あ・・・・これって・・・・・・』

「・・・・こっちもあるぞ・・・・・」

そう言って背後からあたしを抱きかかえるように座ると、左手をおもむろに取った。

そしてはめられたのは、あの時のバラの指輪。

「これでお前は、俺のもんだ・・・・・」

一生、手放してなんかやらねぇからな・・・・・・そう言ってあたしのあごを掴むと、強引で優しいキスをした・・・・・・。


---
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ