clap SS(過去分)
□Nov/2009
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【 crescent moon 】with 隆実
初めて松田さんと2人きりになったのは、三日月の夜だった。
大好きな人と2人で、凄く緊張してたのを覚えてる。
思いが通じて、やっと付き合いだして、でもなかなか会えなくて、すぐに心が折れそうになってた。
新人だったあたしより、もっと遥かに忙しくて分刻みだった松田さんのスケジュールを考えると、我侭なんて言えないって・・・言っちゃいけないって思ってた。
『松田さんに会いたいなぁ・・・・・』
その日、空に浮かんでいたのは、あの時と同じ三日月。
今日もすれ違い・・・・・。
局を出て、近くの公園の傍を歩きながら見上げた空。
そこに浮かんでた三日月に、ぽつっとこぼした独り言。
「なんや・・・・まだ隆実って呼べへんのかいな・・・・。会いたいなら会いたいって、素直に言わな・・・・」
その声に振り返ると、穏やかな笑みを浮かべた誰よりも会いたかった人・・・。
「俺も会えんくて、めっちゃ心配やったけどな」
両手であたしの頬を包み込むと、その手が項の辺りまで滑り落ちて組まれる。
そのまま引き寄せられるように、額にこつんと隆実さんの額が当る。
「浮気・・・・せんかったか?」
『するわけないよ・・・・会いたくて仕方なかったんだから・・・・。松・・・隆実さんはしてなかった?』
「・・・するわけないやろ?慎を退けてまで手に入れた、大事な彼女がおるんやで?」
やっと会えたな・・・・・そう言って頭をくしゃっと撫でられた。
『もう・・・・子供扱いしないで?』
「子供なんて思っとったら、手なんか出せんって・・・・捕まってまうやろ」
『何よ、それ・・・・』
「はは、それより今日はもう終わったんやろ?俺んとこで飯作って?」
『うん。じゃあ買い物行かないと・・・・』
手を引かれて歩き出した時に、ふと空を見上げる。
そこに浮かんだ三日月に、もっと強くならなくちゃねって心の中で呟いた。
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【 full moon & the sun 】with 慎之介
いつも見せてくれる慎之介さんの笑顔って、太陽みたいだって思う。
明るくって暖かくて、見ていて安心する。
惚れた欲目やろ・・・・って、相方の松田さんは言う。
でもほんとに、あの笑顔を見ているとほっとするんだ・・・・・。
その笑顔が曇ってた日は、凄く心配で・・・・・・・。
大事なライブの前に起きた心配事・・・・それであの暖かい笑顔が曇ってた。
『ねえ?慎之介さん。あたしに出来ること、ないですか?』
慎之介さんは、目の前に立つあたしの両手を握って、口元に持っていくとそっとキスをした。
「そしたら・・・・笑ってて?俺、あの満月みたいな優しい笑顔が見たいんや」
『満月・・・・?』
「そうや。いっつも思ってたんや・・・・お月さんみたいに優しい笑顔やなって。それ見てると、俺元気が湧いてくるんよ・・・・・」
『慎之介さん・・・・』
「だから笑ってくれへん?俺の大好きな女の子の、大好きな笑顔・・・・見せてくれん?」
『え?』
「あ・・・・/// ドサクサに紛れて言うてしもた・・・・///」
『あ、ありがとうございます・・・・・・///』
「なぁ・・・・・俺な、本気やねんで?だからちゃんと俺と・・・付き合うてくれへん?」
『・・・・はい・・・・・』
「ほ・・・ほんまに?やった!!」
その明るくなった表情を見て、思わず笑みが零れる。
「あ、その顔。それが見たかったんや・・・・・。ほんまにお月さんみたいや・・・・」
『大袈裟ですよ・・・・』
「いいや、俺にとってはそうなんやって!」
そう言って、あたしにとっての太陽のような笑顔を見せてくれた。
『あたしも・・・・見たかったです・・・・慎之介さんの太陽みたいな笑顔・・・・』
そう言うと、本当に夕陽みたいに赤く染まった。