clap SS(過去分)
□Dec/2009
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Native〜啓一朗〜
『もう知らない!!啓一朗のわからずや!』
あたしにとっては不本意なことで、啓一朗はものすごく不機嫌になってた。
元はといえば、放課後に先生が協力してくれて、一緒にキングコンテストのトロフィー探しをしてたことが始まりなんだけど。
見つけたところは、旧倉庫。
ひょんなことから閉じ込められて、先生と倉庫で一晩明かす羽目になったこと。
・・・・でも何もないし・・・・当然だけど。
先生だって、生徒に手を出すほど暇じゃないはずだよ。
でも・・・・寮生の中でも、啓一朗の怒りはMAXで。
あたしが何度『何にもないし、不可抗力だった』って言っても信じてくれない。
それで喧嘩になって・・・・・・・あたしは先生に送り届けられたばかりの寮から飛び出した。
走って走って・・・・・寮からちょっと離れた高台まで、あたしはやってきていた。
『啓一朗のばか・・・・』
怒られたとか喧嘩になったことが悲しいんじゃない・・・・信じてもらえないことが悲しかった。
しばらく座り込んで、勝手にあふれてくる涙もそのままにして空を見上げていた。
すっかり冬の低い空・・・・・青空もすごく近く感じる。
そのうちに背後の坂道を聞きなれた排気音が上がってくるのが聞こえた。
「やっぱりここにいたのか・・・・・あんな風に飛び出すから、みんなが探してる・・・・」
排気音と同じような低い声が耳元で聞こえるのと同時に、暖かい胸の中に引き寄せられた。
「すまない・・・・・お前が見つからなくて・・・・連絡も取れなくて・・・・何かあったんじゃないかって気が気じゃなかったんだ・・・・・。帰ってきたと思ったら、先生と二人だったって言うし・・・・」
『でも何もなかったって言ってるのに、啓一朗は信じてくれなかったじゃない』
「ごめん・・・・先生に取られるのだけは我慢できなかったんだ・・・」
『え?』
「俺はこんなだから・・・・他の誰に取られても仕方がねぇって思ってた。でも先生だけはいやだったんだ・・・・。ガキみてぇだな・・・・」
腕に力が入って、さらにきつく抱きしめられる。
耳元でかすかに「もう絶対にお前を諦めない・・・・好きだ・・・・」っていう声が聞こえた。
「Native」ZOO from1991to1995〜
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Lightin’ Light〜零〜
『すっかり遅くなっちゃったね・・・・梅さん、怒ってるかなぁ』
「・・・・まだ門限には間に合う。もう少しだけ・・・・あんたとあるいていたい・・・・」
『じゃ、もうちょっとだけ、遠回りしよ?』
「ああ・・・・」
今年の秋から冬は、期待はずれな夜が多かった。
せっかく零と見る約束だった流星群も、天気が悪くて見れなかったし。
『今日は星がよく見えるね』
「そうだな・・・・」
『この前は流星群も見えなかったし・・・・楽しみだったんだけどなぁ』
「・・・・流星群が?」
『それもあるけど・・・・・』
「あるけど・・・・・何?」
『・・・・約束だったから・・・・・』
「・・・・」
すっと手を取られて、すぐ近くのビルの間に引き込まれる。
『・・・・零?』
「・・・・あんまり可愛いこと言うの・・・・・禁止・・・・・」
うっすらと月明かりが差し込むだけの空間。
その空間に二人の影が重なっているのが浮かびあがる。
『・・・・・・零ってば・・・・誰かに見られたらどうするの?』
「・・・・・キスしかしてない・・・・・・」
『そうだけど・・・・見られたら恥ずかしいよ・・・・・』
「でも寮だと、邪魔が多い・・・・・」
もう一度だけ影が重なろうとした瞬間に、ふっと離れる。
「・・・・逃げなくてもいいだろ・・・・」
『だから恥ずかしいんだってば!』
まるでじゃれ合うみたいに、するっと腕の中から逃げ出したり、その手を捕まえてまた腕の中に引き戻したり・・・・そうやって繰り返すうちに零が笑い出す。
「こんなの・・・・久しぶりだ・・・・」
『あたしも・・・追いかけっこなんて、子供のとき以来だよ』
「たまにはいい・・・・かもな・・・・」
そういって零がやさしく笑う。
あたしは零に笑顔を返すと『梅さんに怒られないうちに帰ろう?』そういって家路を急いだ。
「Lightin’ Light」ZOO from1991to1995〜