An offering
□【 Tell it more・・・ 】
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『私でいいの?』付き合い始めるとき、いくみちゃんはそう言った。
オンエアされるの分かっとって、それでもいくみちゃんが欲しゅうて・・・・・覚悟を決めてプロポーズしたんや。
あれからもうすぐ1年・・・・・幸せやった。
ほんのちょっとだけ、物足りんことはあるんやけど・・・・・・。
今頃気付いたんやけどな・・・・・俺、いくみちゃんに気持ち聞いとらんねん。
いくみちゃんが俺の事、どう思っとるんか・・・・知らんねん。
「あほらし・・・・・・・・好きでもない相手と1年も付き合うたりせんやろ。そんなくだらん事聞かせんなや」
休憩の時に控え室でそんな事を隆やんにぼやいてた俺。
「そうやろか・・・・」
「今夜はデートやろ?聞いてみればええやん」
「今更聞きにくいっちゅうか・・・・・・」
休憩が終わって、収録が始まっても・・・・頭の片隅に残ったままやった。
『慎之介さん!!お待たせ!!』
いつになく大きな荷物を抱え、いくみちゃんが駆け寄ってきた。
「なんや?ずいぶん大荷物やなぁ。」
小さい身体に不釣合いな大荷物を見て、つい笑ってしもうた。
『あ、笑った・・・・・・・。せっかくたまには夕飯でも作ってあげようと思って色々買って来たのにぃ』
ほっぺたをぷくっと膨らませるいくみちゃんがかわいくて、ほっぺたをつつく。
「ははは、ごめんごめん。ほら荷物こっちに寄越しぃ・・・・重いやろ?」
『うん、ありがと』
近くのパーキングに入れてあった車に向かって、後部座席に荷物を置く。
助手席にいくみちゃんを乗せると、俺のマンションに向かった。
「今夜は何作ってくれるん?」
『おばあちゃんのとこからお野菜がいっぱい届いたからね、トマト煮でも作ろうかと思って』
大量のナスやたまねぎ、ピーマンにキノコ類、手羽先、ひき肉、トマトの水煮缶、ハーブスパイス・・・・。
豆類、人参、レタス、コーンにベーコン・・・・。
「ほんまに大量やな・・・・・」
キッチンを覗き込むと、そこは色とりどりの食材に埋め尽くされていた。
『でしょ?冷凍して取っておけるようにしとくからね?』
いくみちゃんは手際よく野菜を大量に切っていき、先ずはミートソースを作って冷凍準備をした。
カリカリベーコンを入れたサラダを手早く作って冷蔵庫に入れると、今度は手羽先を煮込み始めた。
手羽先の煮込んだスープからコーンスープを作り、さっき切った野菜を炒めて手羽先と一緒にトマトと煮込み始めた。
「いくみちゃんは手際がええな・・・・・。いい嫁さんになるで?」
『大好きな人がいっつもおいしいって言ってくれるから・・・・・頑張って練習してるんですよ?』
「大好きな人?」
『一条慎之介って人ですけど・・・・ご存知ですか?』
そう言ってにっこり笑った。
「・・・・・俺の事好きって・・・・・ほんま?」
『はい、ほんとですよ?知りませんでした?』
「うん・・・・初めて聞いたわ・・・・もっと言って・・・・?」
『慎之介さんが好きです』
「もっと・・・・」
『慎之介さんが大好き』
「もっと・・・・もっと聞かせて・・・・?」
『大好き・・・・・・』
いくみちゃんが作ってくれたトマト煮にサラダとスープで夕食をとり、ソファーに移動していくみちゃんを足の間に抱え込むようにしてDVDを見ていた。
『私って・・・慎之介さんに好きって言った事、なかったんですねぇ・・・・・・』
「・・・うん・・・・やっと聞けたで?」
『ごめんね・・・・慎之介さん』
「謝らんでもええよ、俺今めっちゃくちゃ幸せなんや・・・・」
『じゃあこれからもっと幸せになろうね?』
「あったりまえや。とりあえず・・今夜は帰さんで?朝まで一緒に幸せになろうや」
真っ赤になったいくみちゃんを、更に強く抱きしめた。
2009-10-12