An offering
□【 Happy Birthday Dear・・・ 】
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12/8・・・学校帰りに用事があるからと、美涼を先に寮へ帰らせた。
週末ならゆっくり選べた・・・・でも、せっかくの休日は美涼の傍にいたかった。
明日は・・・・・・・・・その美涼の誕生日だから。
一緒に買い物に行って、選ばせようかとも思った。
だけど、きっと美涼は遠慮するだろうと思ったから・・・・・。
でも正直言って、どんなものを選べば美涼が喜ぶか・・・・・思い浮かばないでいる。
龍海なら花束とか、晃ならアクセサリーとか・・・・気の利いた物が選べるんだろう・・・・。
駅前の、美涼が気に入っている雑貨屋に行ってみる。
でも、これといった物が見つからない。
「やっぱり・・・・アクセサリーのほうが・・・・いいか」
独り言のように呟いて、ショップの方に足を向けた。
でも、時期的に・・・・・クリスマス向けの高価なものばかりが、ケースの中に所狭しと並べられている。
買えないわけじゃない。
でも・・・・俺たちにはまだ、少し早すぎる気もする。
結局、また何も買わずに店の外に出てきてしまった。
『いらっしゃいませ〜!!』
ひときわ明るい声の方を見ると、オープンして間もない雑貨店で呼び込みをしていた。
「そういえば・・・・この前、準備してたな・・・・」
美涼と買い物に来たときに、オープン準備をしていた気がする。
準備していた物が、女子高生位の女が好きそうだなと思ってたら・・・・・美涼が興味津々で覗いてた気がする。
ウインドウ越しに覗いてみると、やっぱり美涼の気に入りそうな店だと思った。
『クリスマスのプレゼントをお探しですか?』
声の方を見ると、呼び込みをしていた女性がニコニコとしながら俺を見ていた。
「あ、いや・・・・誕生日だから・・・・・」
『そうなんですか!じゃ、是非見ていってください!1点物とかもいっぱいあるんですよ!』
1点物・・・・・・折角美涼の誕生日に渡すのに、あちこちで同じものを見かけるのもつまらない。
その店員の案内で、店に足を踏み入れた。
1点物のアクセサリーを見せてもらっていると、そこにシルバーの土台に赤いスワロを埋め込んだリンゴのモチーフのついたチョーカーを見つけた。
チェーンじゃなくて、柔らかいピンクのベルベットテープをレースに通したものなのも、美涼に似合いそうだと思った。
「これ・・・・・誕生日用に包んで・・・・・」
『かしこまりました。少々お待ちくださいませ』
会計を済ませて、ラッピングをしてもらうと、急いで寮へ戻った。
「美涼ちゃん、明日は美涼デーなんだから、朝までに食べたいもの考えておいて頂戴ね!」
夕飯を食べながら、梅さんが美涼にそう言った。
ヤローの誕生日より、やっぱり女の子の誕生日のほうがワクワクするわね〜・・・・とか言いながら、梅さんはうっとりしている。
「零、 明日は美涼ちゃんを連れ出すなんて、アタシは絶対に許しませんからね!」
「・・・・・なんで」
「アタシの楽しみを取らないで頂戴!」
『梅さん、ちゃんと寮にいますから、そんなに零を威嚇しなくても大丈夫ですよ〜』
「・・・・・美涼は・・・・・俺と二人よりみんなといる方が・・・・いいのか・・・・・・?」
『え、や、そうじゃなくって〜』
「じゃ、何・・・・?」
『え、え〜と・・・・・・』
しどろもどろになっている美涼の頭を、ポンと軽く叩くと「分かってる。からかっただけだ・・・・」
美涼の誕生日は、ほかの連中も楽しみにしてるのは分かってたし、特に外出する予定は入れていなかった。
「ご馳走様・・・・・美涼、後で来いよ・・・・」
『あ、うん』
順番に風呂を使って、部屋着に着替えた美涼が俺の部屋に来たのは、もう10時を回っていた。
『零、 寝ちゃった?』
「いや・・・・起きてる」
美涼の見たがっていたDVDをセットして、二人で並んで画面を見る。
何度か撮りなおされている、古い作品。
「美涼、チャーリー・シーンかキーファー・サザーランドのファンだったか?」
『嫌いじゃないけど?』
「じゃ、なんで・・・・三銃士・・・・・?」
『お話も好きなんだけど・・・・・・クリス・オドネルが好きかな。原作よりも軽いタッチなのも好き。笑えるとこもあったりとかしてて・・・・・・』
「ふーん・・・・・」
確かに原作はやたらと長い・・・・・・続編もやたらと重い・・・・・。
続編は、仮面の男とかいうタイトルで、ディカプリオがやってたらしい。
『でもあたし、ディカプリオはあんまり好きじゃないのよね・・・・』
画面を見つめながら、そう言った。
映画が終わるころ・・・・・そろそろ午前12時になろうとしていた。
時間がきたら・・・・・美涼に渡そう・・・そう決めていた。
「美涼・・・・時間だな」
『ん?何の?』
「午前0時を回ったろ・・・・・あんたの誕生日だ・・・・・」
『あ、そっか・・・・・』
「これ・・・・・プレゼント・・・・・」
『ほんとに?嬉しい・・・・・・』
「・・・・あけてみて・・・・」
『うん・・・・・・・・あ・・・・・・』
「美涼に似合うと思ったから・・・・・・」
『・・・・ありがとう・・・・・すっごく嬉しい・・・・』
早速つけてみている美涼を見て、やっぱり似合うと思った。
「・・・・これにして正解・・・・似合ってる・・・・・」
『ありがとう・・・・零・・・・』
リンゴみたいに頬を染めてチョーカーに触れる美涼を、そっと抱きしめて耳元で囁いた。
「来年の誕生日は・・・・・・二人きりで過ごしたい・・・・」
美涼からの返事は、俺の腰に回された腕に微かに力がこめられたものだった。
でもそれで、俺は充分幸せで、充分満足だった・・・・・。
「じゃ・・・・約束だからな・・・・・?」