clap SS(過去分)
□Nov/2009
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【 calm the light 】with 夏輝
『あ・・・・・夏輝さん。雨が降ってきたみたい・・・』
窓の外をぼんやり見つめてた彼女が、カーテンを閉めてこちらの世界に戻ってきた。
「ぼんやり外を見て・・・何考えてた?」
『ん〜、ただボーっとしてただけ・・・・・』
それが彼女の小さな嘘だってことは分かってる。
もうすぐ、離れ離れになることが分かってるから、不安であれこれ考えてるんだろう。
2人で夕食をとった後、リビングへ移動する。
そのときに部屋の照明を、フロアライトだけで・・・・少し暗めにした。
その方が、なんか落ち着いて話が出来る気がしたから。
『・・・・・もうじきだね・・・・・行っちゃうの・・・・』
「うん・・・・・暫くは帰ってこれないけど・・・・」
『そうだね・・・・でもみんなで決めたことでしょ?』
「うん・・・ごめん」
『謝らないで?だって謝られると・・・・なんだか惨めだもの』
「なんで惨めになる必要があるの?そんな必要ないだろ?離れはするけど・・・別れるんじゃないよ?」
『でも回りはそう思わないもの・・・・・』
「・・・俺と別れたいの?」
『そんなわけないじゃない・・・』
「じゃあ・・・・もう少し自信持ってよ。俺だって不安だけど・・・でもこれを乗り越えたらずっと一緒にいられるって、そう思ってるんだからさ」
いつもだったらソファーに寝転んだ俺の傍で、ソファーの前に座ってミィの相手をしてる彼女。
だけど今夜は、ソファーに腰掛けた俺の膝の上に横向きで座ってきた。
丁度、お姫様抱っこをしてる感じ。
『あたし1人で不安になってるなんて・・・おかしいよね。ごめんね夏輝さん・・・』
「じゃあさ・・・・人質・・・・・いや、人じゃないけど預けるから」
『人質?』
フロアから片手で抱えあげたのは・・・・・・・1匹の猫。
「ミィを預けるから・・・・頼むね?」
『うん!』
ミィを受け取ると抱きしめて、そっとミィの背中に顔をうずめた。
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【 TWO 】with 春
離れ離れになってどのくらい経っただろう。
今でも目を閉じるだけで、君の笑顔も歌声も、頭の中に浮かんでくる・・・。
時々、彼女からメールは届く。
でも俺が・・・メールが苦手なこともあって、なかなか返事を出してやれない。
電話も苦手だから、かけても・・・殆ど彼女が一方的に話すだけになる。
だからそれも・・・・・・していない。
気を使って、たまに夏輝がJADEの近況をメールしているようだが・・・・・。
「おい、春!お前、いくらなんでももう少し連絡くらいしてやれよ!」
夏輝が、怒って俺の部屋に飛び込んできた。
「・・・・泣いてたぞ!?これ以上悲しませるなら、俺が貰うけどいいよな?」
「・・・・・・・・・それだけは・・・だめだ」
「だったらもう少し気を使えよ!」
・・・・・泣いてたのか・・・・・・・そうだな・・・・俺が悪い・・・・・。
夏輝だって、彼女を好きだったのだし、怒るのも当たり前だ・・・・・。
今夜は・・・・苦手とか言っている前に、君に連絡をしよう・・・・。
RRRRRR・・・・・・・・
『もしもし・・・・・春?』
携帯の向こうから聞こえてきたのは、俺の好きな柔らかい声。
「ああ・・・・なかなか連絡しないで・・・・すまない・・・・」
『うん・・・・さすがにちょっと・・・・・辛かったよ』
「そうか・・・・・・これからはもう少し連絡するように・・・努力する」
『うん・・・分かった・・・・。ねぇ、元気?』
「ああ、元気だ・・・・」
彼女が今の近況を話してくれる。
女優としての仕事も入れ始めていること・・・今度映画に出るってこと・・・・。
「ああ、その映画・・・・こっちに楽曲提供の話が来ている。夏輝が・・・受けたらしい」
『そうなの?楽しみ!!』
多分、近いうちに一度戻る・・・・そう言うと、嬉しそうにはしゃいだ声が電話の向こうから発せられる。
きっとこうして君と話をしていれば・・・・・俺たちは変わらずにいられるんだとやっと気付いた。
もう一度、君のことをちゃんと考えよう・・・・これからの2人のために・・・・。