clap SS(過去分)

□Nov/2009
2ページ/4ページ



【 calm the light 】with 夏輝



『あ・・・・・夏輝さん。雨が降ってきたみたい・・・』

窓の外をぼんやり見つめてた彼女が、カーテンを閉めてこちらの世界に戻ってきた。

「ぼんやり外を見て・・・何考えてた?」

『ん〜、ただボーっとしてただけ・・・・・』

それが彼女の小さな嘘だってことは分かってる。

もうすぐ、離れ離れになることが分かってるから、不安であれこれ考えてるんだろう。

2人で夕食をとった後、リビングへ移動する。

そのときに部屋の照明を、フロアライトだけで・・・・少し暗めにした。

その方が、なんか落ち着いて話が出来る気がしたから。


『・・・・・もうじきだね・・・・・行っちゃうの・・・・』

「うん・・・・・暫くは帰ってこれないけど・・・・」

『そうだね・・・・でもみんなで決めたことでしょ?』

「うん・・・ごめん」

『謝らないで?だって謝られると・・・・なんだか惨めだもの』

「なんで惨めになる必要があるの?そんな必要ないだろ?離れはするけど・・・別れるんじゃないよ?」

『でも回りはそう思わないもの・・・・・』

「・・・俺と別れたいの?」

『そんなわけないじゃない・・・』

「じゃあ・・・・もう少し自信持ってよ。俺だって不安だけど・・・でもこれを乗り越えたらずっと一緒にいられるって、そう思ってるんだからさ」


いつもだったらソファーに寝転んだ俺の傍で、ソファーの前に座ってミィの相手をしてる彼女。

だけど今夜は、ソファーに腰掛けた俺の膝の上に横向きで座ってきた。

丁度、お姫様抱っこをしてる感じ。

『あたし1人で不安になってるなんて・・・おかしいよね。ごめんね夏輝さん・・・』

「じゃあさ・・・・人質・・・・・いや、人じゃないけど預けるから」

『人質?』

フロアから片手で抱えあげたのは・・・・・・・1匹の猫。

「ミィを預けるから・・・・頼むね?」

『うん!』

ミィを受け取ると抱きしめて、そっとミィの背中に顔をうずめた。




----------------------------------------

【 TWO 】with 春



離れ離れになってどのくらい経っただろう。

今でも目を閉じるだけで、君の笑顔も歌声も、頭の中に浮かんでくる・・・。

時々、彼女からメールは届く。

でも俺が・・・メールが苦手なこともあって、なかなか返事を出してやれない。

電話も苦手だから、かけても・・・殆ど彼女が一方的に話すだけになる。

だからそれも・・・・・・していない。

気を使って、たまに夏輝がJADEの近況をメールしているようだが・・・・・。



「おい、春!お前、いくらなんでももう少し連絡くらいしてやれよ!」

夏輝が、怒って俺の部屋に飛び込んできた。

「・・・・泣いてたぞ!?これ以上悲しませるなら、俺が貰うけどいいよな?」

「・・・・・・・・・それだけは・・・だめだ」

「だったらもう少し気を使えよ!」

・・・・・泣いてたのか・・・・・・・そうだな・・・・俺が悪い・・・・・。

夏輝だって、彼女を好きだったのだし、怒るのも当たり前だ・・・・・。

今夜は・・・・苦手とか言っている前に、君に連絡をしよう・・・・。


RRRRRR・・・・・・・・

『もしもし・・・・・春?』

携帯の向こうから聞こえてきたのは、俺の好きな柔らかい声。

「ああ・・・・なかなか連絡しないで・・・・すまない・・・・」

『うん・・・・さすがにちょっと・・・・・辛かったよ』

「そうか・・・・・・これからはもう少し連絡するように・・・努力する」

『うん・・・分かった・・・・。ねぇ、元気?』

「ああ、元気だ・・・・」

彼女が今の近況を話してくれる。

女優としての仕事も入れ始めていること・・・今度映画に出るってこと・・・・。

「ああ、その映画・・・・こっちに楽曲提供の話が来ている。夏輝が・・・受けたらしい」

『そうなの?楽しみ!!』

多分、近いうちに一度戻る・・・・そう言うと、嬉しそうにはしゃいだ声が電話の向こうから発せられる。

きっとこうして君と話をしていれば・・・・・俺たちは変わらずにいられるんだとやっと気付いた。

もう一度、君のことをちゃんと考えよう・・・・これからの2人のために・・・・。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ