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□花鳥風月 悠久
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青々と葉を拡げ、風に踊る竹林に挟まれた細い道を進む、京の街から離れたその道を進んだ先に俺の私宅が有る。


攘夷志士、凶悪テロリストとして、幕府から指名手配されて居る俺にも私宅は有る。アジトを転々とし、遊郭に身を潜め活動をして居る俺に唯一、家と呼べる場所。


この竹林に挟まれた細い道の先にその私宅は有る。
今まで、その私宅に帰りたいと思った事なんざ無かったが今は違う。


私宅で俺を待つ人が居る、私宅に会いたい人が居る。

その事実だけで、この道が長く感じられる。


早く帰って土方に会いたい、土方に触れたい、抱き締めたい、土方を感じたい。その思いで、私宅への道を急いだ――――――――。






木造の玄関を開け、土方を呼ぶが返事が無い。
履き物を脱ぎ廊下を進み、居間、寝室、台所と端から開け土方を探すがその姿が見当たらない―――――。



江戸に帰ってしまったのか―――――――――――。

嫌な考えが頭を過る。
京に移り住んだとは言え俺は、常にこの私宅に帰って来れる訳では無い。攘夷活動、テロ活動の計画や実行。其れを行う為にアジトを転々とする事が多い。


そんな俺に土方が嫌気をさして江戸に帰ってしまったとしても仕方がねぇ、まぁ本当に帰っていたとしたら連れもどすだけだが……。



私宅中探して居ると、水の流れる音が耳に止まる。
その音のする方へ脚を進め、目の前の扉を開けた。









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