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□Kiss me again
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カサリカサリ
傘を染める白。
「銀さん、傘貸しますね。」
自分の営業する万事屋の従業員、駄眼鏡新八の姉。
妙に借りた傘をさし深夜のかぶき町の街を家路へ急ぐ。
『銀さん。鍋パーティーしましょうよ。』
その新八の一言で、新八の家で鍋をご馳走になり、もう一人の従業員兼同居人の神楽を新八の家に預け、一人歩く夜道は雪のせいか驚く程静かだった。
新雪独特の感触を楽しみながら歩いていると、真っ白な世界の中に浮かび上がる黒い点。
遠く離れた此の場所からも、その黒い点が何なのか分かってしまう自分に苦笑が漏れる。
だんだんと近づき、大きさを増していく点だった黒が、自分の考えていた物だと確信を得た瞬間、苦く、淡い記憶が鮮やかに頭に甦る。