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□better believe……
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高校入学当初から、周りの連中の様に打ち込める事も、楽しめる事も無く、良く聞く恋愛話しにも興味が無かった俺は、クラスに馴染む事も無く一人浮いた存在だったのに加え、授業もサボリがちだったせいも有り、気が付けば俺はヤンキー的な扱いになっていた。


それでも、元々他人とツルンで行動する事が苦手だった俺にとって高校生活は苦になる事は無かった。


学校に行きたければ行き、出席日数や単位の危なくなった授業には出る。
それ以外の時間は屋上で一人サボるのが俺の高校生活。




何時もの様に一人屋上へと続く暗い階段を昇り、少し重たい鉄の扉を開ける。
暗い場所から一気に明るい場所に出た眩しさに目を瞑り、再度目を開けた先に広がった何時もと違う屋上の風景。



煙草を片手に屋上のフェンスに肘をつき、空をぼんやり仰いでいる一人の男。
今まで何度もこの屋上に来ているが、他の人間を見たのは初めての事だった。




何つーか……気まずい。
広いとは言い難い屋上で知らない人間と二人。
一人で居る事に慣れている俺にとってこの状況は嫌がらせに近い。


仕方無ぇ……この場で知ら無ぇ男と気まずい時間を過ごすよりは、面倒くせぇが授業に出た方がマシだ。
心の中で小さくため息を付き屋上を後にしようとしたその時。


「今日はサボんねぇのかよ………」


突然聞こえた言葉に声の聞こえた方に顔を向ければ、煙草片手に空を仰いでいた男が真っ直ぐ俺を見詰めていた。


整った顔の綺麗な男だと思ったのと、何処かで見た顔だなと頭の隅で考えるが答えが出ない。


「土方、土方十四朗、同じクラスの……」


俺の考えていた事が分かったかの様に目の前の土方が口を開く。


同じクラスなら見た事が有っても不思議じゃねぇな。勝手に納得しながらも先刻土方に言われた言葉にどう返して良いか分からず黙って土方を見詰める。




「ああ…俺が居るからか…………」


吸っていた煙草を足で揉み消し小さく息を吐いた土方が脚を進め俺の横を通り過ぎる瞬間"悪ぃな"と小さく呟いた。



「別に悪かねぇよっっ」


気が付けば、通り過ぎ様とする土方の腕を掴み口走っていた言葉。
先刻まで、気まずくて嫌で仕方なかった筈なのに自分で自分の行動に驚く。


「…………そ、っか、ならもう一服させて貰うは。」


目を見開いて一瞬驚いた顔をした土方が小さく微笑み呟いた。
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