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□is this……
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ジャグジー付きの大きなバスタブに、壁に取り付けられた液晶画面。


恋人同士の愛し合う二人で入ったら、甘く楽しい時間が過ごせるのだろう。
そんな事を考えながら、豪華なバスタブを横目に一人温いシャワーを浴びる。



浴びていたシャワーを止め、溜め息を吐きながら掻き上げた髪は、豪華な浴室と反し備え付けの安いであろうシャンプーのせいで酷く軋んだ。


髪の質とか、艶なんかを特に気にしてる訳じゃ無い。ただ軋んだ髪が、自分自身の感情と重なる様で酷く心が沈んだ。



バスルームを出て、身体と髪を軽くバスタオルで拭き先程まで着ていた服に手をかける。
せっかくシャワーを浴び綺麗になった身体に、今まで着ていた服を着る事に少し抵抗は有ったものの、置いてあるバスローブに似た"いかにも"な服を着る気にはなれなかった。



着て来た服を全て着て、未だ少し濡れている髪をタオルで拭きながら、続きになっている部屋へ向かい脚を進める。



今ならまだ止める事が出来る………



廊下と呼ぶには短い廊下を進んでいた脚を止め、振り返った先に見えた此の部屋の入口。
その入口を見つめれば、今すぐ帰ると伝え、此の部屋から出て行って仕舞おうかと思う気持ちが沸き上がる。


それでも此処に来たのは、無理矢理連れて来られた訳では無く、自分の意志と同意が有ったから。


今更ながら自分の中に生まれたどう仕様も無く逃げたい気持ち、その気持ちを消す様に大きく息を吸い込み、止まってしまった脚を踏み出した。
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