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□孤高の総督―総督―
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「万斎っ、万斎いねぇのかっっ」



鬼兵隊船艦の中を名前を呼びながら片っぱしから探し回るが、目当ての人物は見つから無い。



何なんだよっっ。
何時もは迷惑な位俺の回りに居るくせに、こっちに用事がありゃ居やしねぇなんざ……本当あいつクビだな。
そんな事を思いながら、目の前に見えた襖を開ければ、探していた人間は三味線を片手に何やら書き物をしていた。


「何か用事でござるか?晋助騒々しい……」


サングラス越しでも分かる位の嫌そうな目で俺を見た万斎が、ため息混じりで答えた。


「何か用でござるか?じゃねぇっ、何回呼んだと思ってるんだよ万斎っっ」


「晋助、お主と違って拙者は色々と忙しいでござるよ…今も作曲の最中で手が離せ無いでござる。」


そう言ってまた、何やら書き物を始めた万斎に苛立ちがピークに達し、万斎の握る三味線を取り上げ床に投げ捨てる。


「何するでござるかっっ晋助」


「煩ぇっ、今は作曲なんざどうでも良いっ、テロやるんだよ、テロっっ」


何時もは万斎に言われて嫌々テロをやっている俺だが、今回は違うテロをやる気満々だ。
それに鬼兵隊の総督である俺がやるって言ってんだから、やるんだよ。


「……どうせ、土方殿に会いたいとか、そう言う理由でござろう……私情でテロしろなどと勝手な事言われても困るでござるよ」


万斎が冷めた目で俺を見ながら、ため息混じりに言った言葉。
その言葉は、余りに的確で的を得ていた。



一目惚れをした土方と、たまに会える関係になったのは良いものの、その関係はあまり発展していない。


以前、土方と二人鍋をした事があった。
その時俺は、意を決して土方に好きだと伝えた。
そして、その時土方は、


『…どうでも…どうでも良い奴に態々会いに来るかよっ……』と、顔を紅く染めながら言ってくれた。

あ、ヤバい思い出しただけでヤバいっ、土方可愛すぎだ―――――。


駄目だ、想像の土方だけじゃ満足出来ねぇっ。
これは本当にテロして、真選組と土方を出動させるしかねぇな……。
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