キリリク
□撃退-好きとは言えなくて-
-2000 Hit-
《犀瀾 様》
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「なあ…、なんで、何も言ってくんないの?ンなの…淋しいじゃんっ!オレ達、親友だろっ?オマエの力になりたいんだよっ!」
「………」
「オレって…、そんな信用ない?」
・・・・!
思わず、大きく眼を見開いてしまう。
それと同時に胸の奥から、キュンっと熱く高鳴る何かを感じてしまった。
真紅の瞳は哀しい色を残し、スッと逸らされてしまう。
こんな顔見たの初めてかも…
本気で僕のこと…
「オレ…、情けないよっ。なんか…オレだけが独り善(よ)がりかよっ」
「シン…っ」
「もう…、いいっ!」
拗ねた口調で、同じようにうつ伏せてしまった。
僕は焦って、腕を揺さ振りながら、ひたすら謝る。
「ごめんね。ごめんったら…、ねぇ…、シーン、言うからさぁ…、顔をあげてよっ」
ムスッとした顔で、腕の隙間から、片一方の眼だけを覗かせていた。
「ホントに言う?」
「ぅん…。けど…」
「けど?」
「笑わない?」
「おうっ!笑わない」
「ホントにホント?」
「おうっ!ホント、ホント」
「絶対の絶対?」
「おうっ!…っつか、しつこい!」
「ぅぅ…」
何だよっ!…とイライラしていたシンは、体ごと机に乗り出してきて、キラの口元に耳を近づけた。
「言い難(にく)いんなら、ちっちゃく言ってみろっ」
「ち…、痴漢…、に…ぁったの…」
「はあ?誰が?」
「だからボクが…」
「女に?」
「男…の人に…」
「プっ!マージで?」
「あー、笑わないって言ったのに」
「だぁーって、だって…ククっ、有り得ねーだろっ!また何で?」
「こっちが訊きたいよっ」
シンは腹を押さえて、笑いを堪えていた。
嘘つきっ!あれ程、笑わないって言ったのに…
「悪ぃ、悪ぃ…、久しぶりに、ツボ入ったわっ」
「信じらんない…」
「よしっ!わかった!オレが退治してやるっ」
「どうやって?」
「帰りは、ソイツに会うのか?」
「ぅん…、時々」
任せておけ…と自身満々に言ったシンは、ちょっぴり不安気なキラをよそに、ガッツポーズを見せた。
ホントに任せて大丈夫なのか…なんて、今日一日そんな事ばかり考えて、全く授業に身が入らなかった。
昼食の時もずっとその話で持ちきりで、僕としては一刻も早く、忘れてしまいたいと願うばかりである。
━放課後になり━
僕は、もうシンに縋(すが)るしかなく、ただ言われた通りにするだけだった。
シンの自宅は学校から10分足らずの距離で、通学路は徒歩になり、元はと言えば僕だってこうなる筈だった。
一度、シンは私服に着替える為、自宅に戻り、そこから駅まで向かう。
帰宅時間に、その人と会う確立は極めて少なく、時間差で行動してみるものの、シンには悪いけど、あまり会いたくは無いってのが本音だったりもする。
駅に着くと極力、離れた位置で偵察すると言い出し、ある程度の距離を取っていた。
見つけたら首を振って合図すると約束をし、キョロキョロと探してみる。
やっぱ…いないよっ!
なんて思った矢先…
っっ…!!!!!!!!
いたっ・・
首を縦に振って合図した。
シンは、フンフンと頷き距離を縮めてくる。
その人は、ピッタリと僕の後ろに並び、電車を待つ。
物凄く嫌な時間が流れていく。その人は電車に乗る前から息を荒くさせて、気持ち悪いぐらい興奮させている。
電車が来て一緒に乗り込み、僕は反対側の扉まで移動し、緊張していた。
心臓がバクバク鳴る…
シン…ホントに頼むよっ!
なんて、ずっと心の中で叫んでいた。
電車が動き出した直ぐくらいに、ジワジワ近寄ってきたその人は、最初は肩を触れるくらいに接触してくる。
徐々に腕を動かし、手の平を当ててきた。
シン…
どこ…?
尻を触られ、嫌悪感でいっぱいになる。
もうっ…!!
シンったら…
その時、シンはその人の手を掴み、囁いた。
《触ってんじゃねーよ!この、エロおやじっ》
その人は、ギクッとした顔つきになり、しょんぼり肩を下ろした風で、視線を逸らしていく。
ホッ・・助かった…
ありがとう…と合図を送り、ホントに感謝していた。
しかし・・
その後、思いも寄らぬ事態となる。
《おっさん!ちゃんと見てろよっ!》
はい?なに?
…って思った瞬間、シンの手が尻の方に触れてきた。
ちょ…、ちょっと、シン?
後ろを振り向こうとすると、体をドアに貼り付けられて、動きを封じられる。
なにやっ…っっ、