短編
□誓い
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キラの中で全てが、ふっきれた感じがした。
絵になるくらい似合い過ぎのツーショットだよ…。さっきの空想となんか比べ物にならない。…いや、比べるに値しない程であった。
「いらっしゃい。良く来てくれたね。遠いから疲れただろう?大丈夫か?MS(モビルスーツ)どうした?」
「ん?あぁ…、飛行場(MS場)に置いて歩いて来た」
「な―んで?そんな面倒臭い事するかなぁ?そのまま乗って来て地下に放り込んどきゃい―のにぃ。」
アスランの優しくて甘い声が、幸せそのものに聞こえ胸に響き渡って来た。
MS(モビルスーツ)とは人型ロボットの事であり、特にキラやアスランは自家用で地球圏でも単独で飛べる特別製である。
月とプラントは当然、宇宙空間にある訳で移動手段は一般的に、運賃を払って宇宙飛行用シャトルを利用する。
少し割高になるが免許さえあれば、レンタル用MS(モビルスーツ)の他に、MA(モビルアーマー)と呼ばれる飛行型ロボットがある。
大抵は飛行場で乗り降りをするのだが、ラクスやアスランのようにお金持ちの家には、地下に格納庫がありいつでも使用できる。
因みにキラの家は、言うまでもなく、月極めで市立格納庫を借りている。
「まぁ。キラ様。いらっしゃい。素敵な花束ですのね。」
アスランの隣から聞こえてきた。
「え、えぇ…、あ、ど、どうぞ…。近くのフラワーショップで買ったものですが、気に入ってもらえるかどうか…わからないのですが…」
「まぁ…。そんな謙虚になさらなくても…。とても気に入りましたわ。ありがとうございます」
頭の先から飛び出してくる、かん高い声に丁寧な言葉遣いで、歓迎されキラの手から花束が渡された。
初めて交したラクスとの会話…。
ピンク色のリボンが彼女の髪の色と同化し、花束を手にした彼女の姿は、本当に綺麗でウットリ観とれてしまった。
「今、お茶を、お入れしますわね。」
そう言って彼女は、キッチンの方へ行きアスランに奥のガーデンテラスの方へ案内された。
見る物、全てが珍しく心踊らせながらキラは、無邪気にキョロキョロして『へぇ〜、すごい』の連発をしていた。
「キーラっ!!!」
少々…呆れ気味で、溜め息まじりの声が突然飛んできた。
あっ。ヤバッ。アスランの存在を忘れかけて、はしゃいでた僕は我に返った。
「あ、ご、ごめん…。あまりにもすごい、おうちだったもんで…ボク一人で舞い上がっちゃってて…」
「…………」
テラスの真ん中に白いイスとテーブルが用意されていて、アスランは軽く溜め息をつき僕に背を向ける形に腰を降ろした。
「い、言うのが遅くなっちゃったけど…こ、婚約おめでとう」
「…………」
「真っ先に言わなきゃいけないのに…。ボクったら…。本当に…ごめんね…」
「…………」
アスランは又、溜め息をついてテーブルに肘を乗せた。
「ア、アスラン…?」
「……ンな事…、どうでも良いんだっ」
………………?
小さくて低い声だったから良く聞き取れなかった。
けど…、お祝いの場なのに僕はアスランを怒らせてしまったみたいだ…。
自分の軽はずみな行動に自己嫌悪に陥ってしまった。
暫く…沈黙が続き僕はアスランの背中を見下ろす形で後ろに立っていた。
「キラ。…座って…」
アスランの向かいのイスの方を指で指されて僕は言う通りに腰を降ろした。
「ア、アスラン…。お、怒ってる?…よねっ?」
そっぽを向いたアスランに対して上目づかいに、恐る恐る訊いてみる。
「ああ。と――っても怒ってる」
ギロッと睨んだ顔でキラの方を向いた。
や、やっぱり…。僕がアスランそっちのけでお祝いの言葉を言い忘れた所為だ…。
「ご…、ごめんね…。ほんとうに、ごめんなさいっ…」
泣きそうになるのをグッと堪えて、鼻声まじりで一生懸命謝った。
「ボ、ボクには手の届かない二人で…。本当にとても良く似合ってて…」
「…………?」
「でも…、ボクにはやっぱり高嶺のはなで…。ボクもそれに負けないよう…、二人に迷惑掛けないように…、が、頑張って…」
「……?キラ?…」
「あ、明るくしようと…振る舞って…。…ごめんね。アスラン…。ほ…、本当に…ごめんね…」
「キラ?な、何っ…、」
「ボクの態度…そんなに、気にさわった?…さわったから…怒ってるんだよね?…。と…、当然だよね?いくら親友でも限度があるよね?で…、でも…、嫌わないで…」
堪えていた涙が我慢しきれず、次から次から溢れ出て来て、止まらない状態になった。