激短編
□〜健康診断シリーズ〜 完結編 『感度』
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━コンコン
『どうぞ…』
「失礼します」
今日は、飛びっきり珍しいスイーツが手に入ったと、ラクスからの呼び出しで、お茶会を招かれる事になり議長邸…通称ラクス邸へ来ていた。
「キラ…、こんにちは。よく来て下さいました」
「やあ、ラクス…」
僕は部屋に入る早々、ラクスには悪いけど、辺りを見回して眼を輝かせていた。
それもそのはず…いつも自分がこよなく楽しんでいる『おやつタイム』とは全く比べ物にならないくらい、200畳…いや、正確には良くわからないが、とにかく広い部屋一面、四方にテーブルが並べられ、その上にこれでもかと言わんばかりの、ケーキやお菓子たちの山が広がっていた。
それはもう…次元が違うスケールで、甘いものに目がない僕にとって爛々と輝かせるのは至極、当然の事である。
思いっきり食べるっ!
その意気込みもあって、軍服は羽織らずゆるいゴムのジャージ姿で参加する。
「お好きなものを、お好きなだけ召し上がって下さいね」
ニッコリ微笑まれて、ラクスは中央に備え付けのテーブルセットに腰を掛け、お付きのメイドにお茶を注がれていた。
ビュッフェ形式だから、手近にあったワゴンを借り、何枚かお皿を並べガラガラと押しながら、トングで好きなケーキたちをチョイスしていく。
目移りしながら、アレもコレもと選び一周するのに、30分は軽く超えていた。
中央のテーブルに戻ってくると、いつの間にか副隊長のクリスが、ラクスと淹れ立てのお茶を嗜(たしな)んでいるのに気付く。
「隊長…私も、僭越(せんえつ)ながら議長にお声が掛かり、ご一緒させて頂くことになりましたので、本日は宜しくお願い致します」
「へぇーそうなの?こちらこそヨロシクねっ」
その言葉に、ニヤッとした笑みを零したがキラは全く、気にも留めず『いただきます』の掛け声と共に口に運び始めた。
しばらくしてメイドの一人がお茶のお代わりを運んできた。
━カチャ・・
コポコポ・・
「あぁ…ありがとう…」
メイドはペコっと会釈して何処かへ行ってしまう。
「ラクス…、コレ美味しいねっ。流石に飛びっきりって言っていただけはあるよ」
「あら、そう…?それは良かったですわ」
ほんの数十分足らずで、見事ペロリと平らげ更に、お代わりをする為立ち上がった…その時、足元がふら付き床に膝をついてしまう。
「隊長!大丈夫ですか?」
すぐに席を立ちキラの目の前に座り肩を掴まれる。
グラっ・・
再び立ち上がろうとするとまた、目眩がする。
腰を支えられ椅子に一旦、戻され下からクリスは見上げていた。
アレっ・・?
何か…おかしい…
頭がグルグル回る…
クリスの顔が何十にも見えてきて…横でラクスの呼びかけも遠く彼方へと、追いやられそのまま…僕は記憶を失くしてしまった。
どのくらい…眠っていたのだろう…
目を覚ますと、ベッドの上で横たわっていた。
「お目覚めになりました?」
ラクスが声を掛け、横でクリスも覗き込んでいる。
「あぁ…、ごめん…ねっ。良く分からないんだけど…急に目眩が…」
「フフっ…、隊長ったら…食べ過ぎなんですよっ」
い、いや…ソレおかしいでしょ?食べ過ぎたから目眩するってことにはならないと思うし…
「キラはまだ食べ足りないようですわねっ。仕方のない方…。クリス、もっと持ってきて差し上げて…」
「はっ。かしこまりました」
????
状況が呑み込めず、今のやり取りは理解不可能だった。
ラクスに言われた通りクリスがワゴンいっぱいの、スイーツを運んでくる。
「隊長のお好みってどれですか?」
どれ…と言われてもベッドに寝かされているのに…
手を動かそうとした時…
えっ・・?
動かない・・?
アレっ?うそ…!
よく見ると…ベッドの柵に、手と足を上下に分かれてロープのようなもので縛られていた。
ちょっ…、な、なんで?
「あらっ?お気付きになりました?」
ラクス?
「隊長?お気分は如何ですか?」
クリス?
物凄く…嫌な雰囲気の中、そんな質問にどう答えて良いか迷ってしまう。
ラクスが何やらファイルのようなものを眺めながら、頭の方から声が聞こえてきた。
「クリス…始めて下さいな」
「はっ…」
指示されたクリスは上着のジッパーに手をかけ下ろしていく。
「え?ちょっ…クリス?なにやってんの?」