Cafe BEasT BOOK

□ある日
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その日は[Cafe BEasT]開店以来の盛況だった。
10席のテーブルが6席以上埋まることのない店で、行列が出来るのは珍しい以外の何物でもない。

「(あぁ〜…めんどくさい。いつもなら梯と帰っている時間なのに…)」
祈は口の中でつぶやきながら、ご注文はお決まりですか?とにこやかに尋ねた。

「紅茶はアールグレイとオレンジペコーがございますが、どちらになさいますか?」
混じり気のない笑顔で梯が尋ねると、若い客は口元をほころばせながら、オレンジペコーと言った。
「はい、ただいま。」


「契、オレンジペコーまだ?」
「うるせぇ!気が散る!」
一度にフライパンと鍋とやかんを扱う姿は、ある種のピエロを想像させる。
フライパンにはハンバーグ、鍋には大量のスパゲティ、やかんではお湯が湧いていた。
ハンバーグを皿に乗せ、スパゲティを均等に取り分けると、ようやく梯を見た。
「で、なんの用だっけ」
「えと…オレンジペコーはまだ?」
「オレンジペコー?もう茶葉ないぜ?」
えっ
「どうしよ…」
梯が呟くと、契は呆れた顔をしながら
「しょうがねぇな…報告しなかった俺が悪いからな。謝ってくる。」
「わっ悪いよ!オーダーとったの僕なのに」
「いいよ、色々めんどくさくなる」
「契…」
梯は大きい目をうるうるさせた。
「やっぱり君って優しいんだね!ありがとう!!」
「ばっ」
契は勢いよく梯に向き合うと、顔を真っ赤にさせて
「ば、ばかかっ!お前のためじゃねぇっての!」

 
 
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