Cafe BEasT BOOK
□小包み
2ページ/7ページ
遡ること、今日の朝。
伝票と格闘していたら、朝になっていた。
「…なんでこんな時間に…」
オーナーの神谷は時計に手をのばすと、時間を確認した。
時刻は7:30。
左手にあったはずの煙草は既になく、手が灰まみれになっていた。
神谷が煙草で火傷をおうことはないが、かつては最後の1本だったそれを見て、神谷は悲しそうに目を細めた。
「…皇ー…」
返ってくる声はない。
唯一共に残業していた相手も、愛想を尽かしたか。
「なんだよ、皇まで見捨てていきやがって…」
灰まみれの左手を払うと、神谷はデスクから離れた。
財布を片手に、煙草を買いに行こうとしたが、玄関から聞こえるチャイムがそれを許さなかった。
「……はいはーい…」
チャイムを予期したような格好になっているが、それはたまたまである。
店全体が見渡せる中二階から降りると、財布の代わりにハンコを持って玄関へと向かう。
「おはようございます。お届け物です。」
「ご苦労様…」
「ありがとうございました。」
朝にぴったりの爽やかな挨拶をする宅配員に軽く会釈すると、郵便物を受け取った。
「…誰だこりゃ。」
領収書を見ると、見覚えのない名前と住所。
なんだこれ?
気のせいか、中からかすかに音がする。
「…とりあえず煙草だ…」
神谷は特に気にとめず、ハンコを財布に変えると、自動販売機へと向かった。