Cafe BEasT BOOK
□小包み
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「おはようございます。」 「おはよう。」
「なんだ。お前がこの時間にここにいるのは珍しいな。」
常に最後に来る藍は、目の前のウェイターの皇に驚いた。
いつもなら奥でミーティングをしているはずだ。
「契が来ないんだ。だからオーナーが少し見てこいと。」
「なんだ使いっぱしりか。……おい、この小包みはなんだ。なぜ客用のテーブルに置いたままにする?」
「あぁ…」
まぁ色々あってな。
「ところで、お前はこの小包みから妙なものを感じるか?私にはさっぱりだ。」
「なにがだ?」
「火薬の匂いとか…」
「あぁ、するな。」
「は?」
平然と答える藍に、皇はいつもは見せないような顔をした。
「え…今」
「微かだが。…なんだ、狼の嗅覚も落ちたな。」
呆然としている皇の鼻を軽く弾いた。
それでも皇に魂は戻らない。
「…ほうけてる場合か。契を探すんだろう。早く行け」
「そ…そうだな…」
「あぁーもう!!!なんで誰も開けようとしたりしねぇんだよ!!興味ねぇのか?!」
そう声がすると、物置から契が飛び出してきた。
「俺が景気づけに買ってきた花火を皆が見て驚く姿が見たかったんだぜ?なのになんだよ、そのシケた反応は!」
契…
ため息混じりに名前を吐くと、皇は顔を伏せた。
「お前のしたことについては、もういい。後で問おう。だが…」
「なんで花火の火薬がこんなに匂いが薄いんだ?」
あぁ、簡単なことだぜ。
「俺特製の脱臭剤をいれた。」
「……脱臭剤?」
「そうだよ。だってオーナーが"梅雨は匂いが篭るから嫌いだ"って言ってたじゃねぇか?しらねぇ?」
契の得意気な説明も、皇の耳には届いていなかった。
私は脱臭剤に負けたのか…。
「…お。丁度いいところに来ましたね。」
「なんの騒ぎだー。奥までよーく聞こえたんだが……って契!お前なにしてんだ、これから探しに行こうと思ってたんだぜ?」「おー!オーナー!なんでこれ開けないんですか〜。店終わったら花火やりましょう!そのために」
「…まさかその小包みお前か?」
キョトンとする契。
だんだん目に力が入る神谷。
「…俺の煙草を買いに行く邪魔をした小包みをよこしたのがお前だったなんてなぁ…」
「は?なに?」
「あとでその花火と一緒に燃やしてやるっつってんだよ!!!さっさと仕込みしやがれ阿保がぁあ!!!!」
「うわうわうわ何?何?」
周囲に助けを請うように見回すが、藍も皇も目を合わせようとしない。
「え、ちょっと。俺なに、なにした?ねぇ、結構やばいことしたの?ねぇねぇ?」