Cafe BEasT BOOK
□初夏の日差し
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初夏の日差し
空は青く、風は澄んでいる。
まだ照り返しのないアスファルトは、
地面に近い四足の動物にも優しい。
日陰に入ればまだ少し肌寒く、
日向に出れば日差しが眩しい。
頭上から、
ちちち、と鳴き声が聞こえた。
「ねぇ、祈ぃくん。あれ見てよ。」
「なに?」
「あそこ。」
「…なに?」
緑に隠されたそこからは、
母親の帰りをいまかいまかと待ちわびる小鳥が見えていた。
生憎種類はわからないけど、
小鳥なのに既に美しい青い羽根が生えている。
「…あぁ。」
「見えた?あれなんていうんだろうね。」
「さぁ…。あ、皇さんなら知ってるかも。」
今度ここ通ったら聞いてみようよ。
「なら巣立つ前に来ないとね。」
「いや、皇さんなら残った巣から判別できるかも。」
「言えた。」
皇さんなんでもできるからねー。
ふっ、と
一陣の風が僕らの間を駆けていく。
まるで春と夏の間の、ほんの少しの心地よさを喜ぶかのように。
→あとがき