Cafe BEasT BOOK

□日常
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「おはよう。」
「おはよー」

まことの家は近い。
この町でも目立つ家に住んでいる。
両親と祖父母に可愛がられている。
でもまことは家が嫌いらしい。
家族とは一緒にいる方が楽しいのに。

「今日は?」
「セイロンー」
「………ひどい。」
「俺もそう思う。」

まことは一口飲むと、渋い顔をした。
いつもは一瞬眉間に皺がよるだけなのに、相当苦いらしい。
視界に入った缶を見て、さらに顔をしかめる。

「…またあの人のお土産。」
「5個目だよねー。まことモテモテ〜」

自分のパンを用意しながらからかうと、目のはじで睨まれた。

「おもしろくないよ。」
「ごめんごめん。」

紅茶を半分ポットに戻すと、ティー・オレを作るかのように牛乳を注ぐ。
最後の一滴までカップに落とすと、クッキー缶に手をのばした。
チェス板のような柄と、王国のシンボルが描いてあるのを見比べている。
まことの家なら、もっと質のいいクッキーがあるはずだけど。


「今日はなんかあったっけ。」
「何もないよ。」
「じゃあ音の買い物だね。」
「だから一人で平気な」
「嫌。」

言い終わる前に遮られた。

「ついていく。」
「だって終わったら1時まわるよ〜、遅くなっちゃ」
「店終わった時間で十分遅いでしょ。」

う。

「……そろそろ用意したら」
「えっ!もうそんな時間?」
「今7時28分。」
「やばっ」

飲んでいた紅茶を机に置き、急いで支度を始める。
服をとり、ワックスをとる。
ウニみたいに立たないと気が済まない。

「今7時59分。」

クッキーを退屈そうに眺めながら、まことがつぶやく。
携帯が震えているが、目にもくれない。

「頭平気?」
「なんとか。」

髪の具合を確かめてもらうと、洗面所を交代する。
その間に食器を洗い、クッキー缶をまことの鞄に詰める。
灰色のフード付きパーカーに斜めかけバックという、ボーイッシュな女の子みたいなまこと。
さらに148cmという身長と、さらさらの王子様のような薄い金髪のお陰で外人の女の子みたいだ。

言ったら怒られるから言わないけど。

「いい?」
「うん」

俺も斜めかけバックを掴み、部屋を出た。


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