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□意味不明な私達
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シュボッ
校舎屋上
時刻は11時を少し過ぎたくらい、教室では普通に授業が行われているというのに、ここにいる男子生徒は、堂々とタバコに火をつけ、空をボーッと見ながら壁に寄り掛かっている
「スゥ〜・・・プハッ〜」
タバコの煙を口から吐き出し、もくもくとその煙が飛散しながら消えていくのを何も考えずに見る
彼・・・レッドはそうして時間をつぶすのが好きだった
いつも朝になって迎えに来る幼馴染の少女と一緒にいる方が楽しいが・・・こちらの方も一種の別の楽しみがある
正直な話、自分は大学なんぞに行く気も金もないので授業自体受ける意味がない
しかも真面目に聞こうとしても分からないとくれば、さぼってもたいして問題はない
だが、こういう時に限って
バンッ!
「バカレッド!!アンタぁ、またサボってるわねェ!?」
このやかましい幼馴染、カスミがやってくるのだ
「っるさいな・・・お前はオレの母か?」
「似たようなもんよ!この低能赤野郎!!」
ああそうですかと、レッドは気にする様子もなくタバコをふかす
「ていっ!」
「あっ・・・」
だがさすがはカスミというべきか、レッドの口からタバコをブン取ってしまった
そんでもってレッドがポカンとしている間に、タバコを地面に叩きつけ、足でふんずける
「あ〜、何すんだよ〜・・・最後の一本だったのに」
「じゃかましい!!」
カスミはズビシッという音が聞こえてきそうな勢いでレッドの顔面を指差す
「アンタねェ、ただでさえバカなんだから授業くらいちゃんと出なさいよ!つかそれ以前に未成年がタバコ吸わない!!」
シュボッ
「プハ〜ッ「って、人が入ってる傍からアンタはぁ!!」」
真昼間の校舎屋上で騒いでいる2人の男子生徒と女子生徒
静かに授業を聞いている教室には彼らの声は丸聞こえなのだが、一同感動するくらいにスルーしている。面倒事は誰もがゴメンこうむるのだ
そのことを、当の2人は知るよしも・・・っていうか知っても気にしなそうだ
昼休み
「お前ら・・・なんでこう毎日のように同じことができんだよ」
「仕方ないでしょ!レッドが授業抜けだしてるんだから、委員長として私が「そういうカスミだって、そうやって授業さぼってんじゃん・・・オレと同じだね」」
「誰のせいよ誰の〜〜〜〜!!!」
「痛い痛い痛い!!耳をひっぱるな!!ちぎれる!!!」
「全然進歩がないよなお前ら・・・」
昼休みは学生にとっては唯一のフリータイムとなる。生徒たちは友人達と机をくっつけ、自分の弁当を広げている
レッドはカスミ、そして友人のグリーンと机をくっつけてはいるが・・・弁当を食べてはおらず、ほぼ乱闘状態に近い
レッドはカスミに耳をひっぱられ、グリーンはそんな2人を呆れながら見ている。これもいつもの光景なのか、誰も気にした様子もない
しかもコレを5歳の頃からほぼ毎日続けているとなると・・・感心を通り越してどうでもよくなる
だがまあしかし、ここにイレギュラーが一つだけある。それは・・・
バキリ
「ヒッ!」
突然教室の後ろの扉近くの男子生徒が小さく悲鳴をあげた
男子生徒はおそるおそる音のした方を振り向く
そこには、背中からドス黒いオーラを発しながら、扉に隠れつつレッド達の様子を覗いている女生徒がいた
・・・いや、覗いているというのは語弊があった。正確に言えば、手で扉を掴み、その一部分を握力のみで破壊している
名をハルカ。カスミの所属する水泳部の2年生である
「くっそ〜レッドめえええ・・・私のカスミ先輩とまたイチャイチャしやがって・・・!!」
・・・まあ分かる通り、彼女はカスミLOVEの子である
ことわっておくが、ハルカはいたって優しい子である。クラスでは誰に対しても笑顔で接し、いつもみんなの中心にいる明るく好い子だ。ただカスミのこととなると・・・
ダダダッ、ガシイッ!
「レッドオオ!カスミ先輩から離れろオオオオ!!!!」
「えっ、ハルカちゃん?」
「カスミ先輩、その男から離れてくださいィイイ!!」
ハルカはカスミの腰に抱きつくと、レッドからカスミを引き離そうとジリジリとひっぱる。だが、カスミはレッドの耳を掴んだままであるからして・・・
「ちょおおおおおおおおお!マジ取れる取れる!!!痛い痛い本気でいてえええええ!!!」
「うるさあああああああい!!アンタみたいな男の耳がどうなろうと知ったもんですか!それよりもカスミ先輩は私とお弁当食べるのォオオオオ・・・!!!」
「ちょ、ちょっとハルカちゃん離して「いやいや、お前もレッドの耳離してやれよ。なんで掴んだままなんだ・・・」
「カスミ先輩とお弁当食べるの〜〜!!」
「耳がああああああ!!!つ〜かハルカも帰れェええええ・・・・!!!」
「アンタは早くカスミ先輩と別れろおおおおお!!」
「・・・・はあ」
そしてまた騒ぎだすレッド達と、それをなかったことのように友人達と談笑しながら弁当を食す生徒達。感動すべき結束力である・・・多分
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