「伯爵様」 メイドが俺を呼んでいる。正直、この呼ばれ方にはまだ慣れていない。 「…なんだ」 「ピオニー皇帝陛下より『すぐに参上せよ』との事です」 「…わかった。すぐに行く」 俺は読みかけの本を机に置き、肘掛け椅子から立ち上がる。 「またか…」 外殻大地が降下後、ファブレ公爵家の使用人だった俺は暇を出され、ピオニー皇帝から屋敷を頂いて貴族として生活している。 俺がしなくてもメイドが家の中の事をすべてしてくれる。 使用人の頃が長かったせいか、慣れるのには時間がかかった。 そんな俺の事を知ってか知らずか、陛下はこうして俺を呼び付けては雑用を押し付けてくる。 「ジェイドの旦那もいるだろうに…」 気が付けば俺は独り言を呟いていた。 |