―夢だった。 悪夢。俺が、人を殺す― 「はぁっ…はっ」 布団から飛び起き、呼吸を整える。隣で寝ている男の様子を窺うが、起きた気配はない。 体が冷たい。汗を吸ったシャツが纏わり付いていてとても不快に感じた。 あと何度、この夢を見れば良いのだろうか。そうだ。今日の男は、昔の俺が殺したいと思ったあの男とは違っていた。 見慣れたあいつは―― 布団からそっと抜け出た。汗で不快に湿っているシャツを脱ぎ、アリスにバレないように同じシャツを着る。そのあと、からからに渇いた喉を潤すためにキッチンに行く。 自分の両手を見た。血の感触がまだ鮮明に残っていて、透明の血が付着しているかのように思う。洗剤で丁寧に両手を洗った。どんなに洗っても拭っても、まだ付いている気がする。俺が神経質なだけだろうか? |