世間の噂に疎いアリスに、ほんの軽い気持ちで嘘をついた。 「○月×日に地球は滅亡するらしいぞ」 アリスの部屋に行って、新聞を広げて読みながらさりげなく言ってみた。 「…うそ!?」 いつものコーヒーをソファですすっていたアリスが驚いた表情で俺を見る。 「絶対嘘や」 カップに視線を落とすアリス。嘘には違いないが、こんな反応をするとは思わなかった。尚もアリスの様子をこっそり窺う。 「そんな話いっこも聞いてへんけど…ほんまにほんまなん?」 顔を上げたアリスの目が、心なしか潤んでいるような気がする。 「らしいぜ。俺も学生から聞いて半信半疑なんだが」 「そんなん嫌や…滅亡とか…」 見る間にアリスの両方の目から大粒の涙が零れ落ちてきた。 「キミともうそんなに過ごされへんとか…ありえへん。なんでキミはそんなに冷静なん? 悲しいとかないん?」 アリスはそんな風に考えるのか。 「…ないぜ」 |