「ではそちらにあるものを順番に並べて棚にしまってください」 執務室の書架にはたくさんの資料が保管されていた。それは図書館のように順番に並べて整頓されている。もちろん、散らかすのは専らピオニー陛下だった。 「ガイ」 唐突に名前を呼ばれた。作業の手は止めずに返事だけする。 「あなたは初めて逢った日の事を覚えていますか?」 そう問い掛ける彼の顔を見ると、口元はいつものように微笑んでいるのに、目が真剣そのものだった。 「あ、あぁ。もちろん覚えているさ」 そうだ。 あの頃の俺は身分を偽っていた。 タルタロスから飛び降りる。 『ガイ様、華麗に参上!』 その時、小さな女の子―アリエッタ―を人質にとっていたマルクトの軍人こそ、ジェイドだった。 まさか今、その彼とこんな間柄になるとあの時どうして思えただろう。 |