短編集

□glacial winds.
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「寒っ。マジ寒いっ!」


学校出る時「寒いって言うな」って言ったのはどこのどいつだ
俺が言ったら駄目でお前は言っても良いのかよ。
理不尽だ。

木枯しの吹き荒れる中、高遠祐司は海堂聖の背を冷たい瞳で見つめた。




glacial winds.




「化学の課題さ、やる気無くなったんだけど」
「あ、そ」
「うん、そ」


高遠と同じトーンで海堂は返す。
全くやる気も何も無いトーンで。


「別にさー、化学90ちょいだったから良いんだけどさー」
「あ、そ」
「うん、そ。で、やっぱ出しといた方が良いと思う?」
「多分ね」
「だよな。出しといた方良いよな。つか寒」


寒いのはこっちも同じだって
こんなに雪もあるんだしさ。

と、高遠は例年より幾分か多い純白の結晶に目を走らせた。


「つか、あの化学90いったのかよ。ありえん」
「習ったとこしか出てなくない? 高遠いくつ?」
「16」
「歳じゃない」
「82」
「良いじゃん。それくらいだったら」


良くありません。確かに隣の相模は25点でしたげど。学年平均56.3でしたけど。


「だから高遠機嫌悪い?」


は?


「なにを言って……」
「ああ、そっか。そうなのか。だからねー」


つるつると滑る足元に注意を払いつつ、突拍子も無いことを言う海堂に高遠は首を傾げた。


「今日も寒いなーっ」
「だからなにがだよっ!」






→後書き(言い訳。)
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