BASARA

□SS
20ページ/29ページ

《昔の思い出》

(※学パロ)
(※慶次視点)


「なあなあ、元親の子供の頃ってどんな感じだったんだい?」

「は」


馬鹿話に花を咲かせていた昼休み。
何の気なしにそんなことを聞いたら、弁当の中の焼き魚(自分で釣ったらしい)にかぶりつこうとしていた元親がなぜかびくっと硬直した。


「いや…今と大して変わらねえよ。何でいきなりそんなこと聞くんだアンタ」

「え、なんとなく気になってさ」


青い目がギラリと光る。
よくわからないが地雷を踏んでしまったらしい。
こんなとき、サインを見逃して問い詰めたりするとプロレス技で絞められたりする。
あの体格から繰り出される容赦ないプロレス技はかなり痛い。


「ふん…何が今と大して変わらない、だ。
笑わせるでない」


だがそこで、いきなり元就が会話に参加してきた。
元就が会話に参加してくるのは本当に珍しい。
いつもは一人で黙々と弁当を食べた後で屋上に行き、陽なたぼっこしながら難しそうな参考書を読んでいるからだ。


「こやつは昔、大層大人しくてな…まるで女子のようであったぞ」

「うそっ!本当かい!?」

「ぶっ!!」


元親がむせた。
それを見て元就が得意げな顔をする。


「今でこそそんな無駄にごつい体をしておるがな。
小学校の頃などはその辺の女子よりも細くて髪も長く…」

「やめろ毛利それ以上暴露するんじゃねえっ!!」


飛んできた箸のケースを元就がひょいと避ける。
全力で振りかぶったそれはそのまま後ろを通りがかった幸村の後頭部にクリーンヒットした。


「ぐふぁっ!!」

「うわっ、わりぃ真田!」


慌てふためいた様子で幸村に駆け寄る元親を一瞥して元就は話を続ける。
幸村大丈夫かなと思ったけど、幸村は毎日家の人と殴り合いをしている(?)と聞いたからあれくらいダメージに入らないだろう、きっと。


「いつであったか、公園の木の下で一人、あやとりをしていたこともあった」

「それあれじゃないかい?恋に落ちるシチュエーションみたいなさあ」

「奴が女子であればな。
しかし服装も普通に花柄などを好んでおった故初対面の奴らは完全に誤解…」

「っざけんな今すぐその話やめろぉぉおおおっ!!」


絶叫しながら元親が帰って来た。幸村はやっぱり何ともなかったみたいで普通に佐助と喋っている。


「あ、おかえり元親」

「おう、ただいま…ってそうじゃねえだろ!!
毛利アンタ何適当なこと言ってんだ!!
あ、あの花柄のパーカーは親の趣味で着せられたのをアンタがたまたま見かけただけで」

「本当にそうなのか」

「は?」

「貴様が昔愛用していた水筒は白地に赤紫の花がいくつか描かれた女子用の品であったと記憶しておるが」

「うぐおぉぉおおっっ!!」

「何それ可愛いんだけど」


机をガンガン叩いて悶絶する元親の横で水筒の柄に対する素直な感想を述べたら鬼の形相で睨まれた。
やばい、かなり怖い。


「それからそうそう、愛読書は花の図鑑であったな」

「やめてくれえええっ!!」

「あー、だからかあ!」


一昨日の出来事を思い出して、俺は納得!という表情で頷いた。
元親は半分以上残っている弁当に全く意識が向かないらしくまだ机をガンガン叩いている。


「思い当たる節があるようだな前田」

「まあ、ちょっとばかしね」

「言ってみよ」

「一昨日美術の授業で、自然公園に行っただろ?
花の写生するからってさ。
そしたら元親、あそこに生えてる花の名前大体言えるんだよね。
俺びっくりしてさあ」

「うるせえよ!あれくらい常識だろ!」


自棄気味に弁当をかき込むと、元親はダン!と音をたてて弁当箱を机に置いた。
今日の元親の机はきっと、HPが真っ赤に点滅しているだろう。


「何なんだよアンタ、俺が一体何したってんだよ!」

「貴様が我に何をしたか…だと?
ふん、数えきれない程あるわ!!」


急に元就が立ち上がった。
いわゆる仁王立ち。
叩きつけられた参考書が良い音をたてる。


「まずは中学校!
定期テストが近づく度にフラフラと我の所に来ては
『毛利ー、ここ教えてくれよー』だの『なあ、アンタならヤマかけるとしたらどの辺がいいと思う?』だのと我の勉強を邪魔しに来おって…
自分でなんとかせよ!!
恥を知れ!!」

「なんだよ、ちゃあんとテスト終わった後にお礼で小豆白玉パフェおごっただろうがよ!!」


さっきの衝撃からようやく立ち直ったらしい元親がいつもの口調で反論する。


「へえ、元就一応教えてくれたんだ!意外と優しいねえ」

「家まで押しかけて来られてはどうしようもあるまい。
あの時程貴様と近所であったことを恨んだことはないぞ長曾我部」

「旨っそうにパフェ食ってた癖に何言ってんだよアンタ」

「それとこれとは話が別ぞ!!」


結局この二人は仲が良いんだろうなあ。
本人達は真面目に喧嘩しているつもりなんだろうけど見てると結構面白い。
前は仲裁してたけど、最近はもういいかって感じがする。
なんか楽しそうだし。


「それに夏休み…週三のペースで我の家に来ては無理矢理我を外に連れ出していたであろう!!
あれは結局なんだったのだ!!」

「だってアンタ、他に全然ダチいねえみたいだから、俺が一肌脱いでやろうと思ったんだよ。ずっと一人ってなあ寂しいだろうし」

「うるさい黙れ!!
我は一人でも全くもって構わぬわ!!
むしろ夏休みは貴様の顔を見ずに済むとせいせいしておったというのに貴様という男は」

「アンタ俺が連れ出さなきゃずっと家にいただろ?
でもそんなの不健康じゃねぇか。
陽なたぼっこも縁側でぼーっとしてるだけみてぇだったしよォ」

「陽なたぼっこなどという間抜けな呼び方をするでないわ!!
あれは日輪浴ぞ!!」

「どっちも似たようなもんじゃねぇか!!
つか日光浴でいいだろ!!なんだよ日輪浴って!!」


元親がツッコミを入れた所で丁度予鈴が鳴った。
俺は席に戻ったけど、二人はまだ何か言い争っているみたいだ。
元就はよく友達なんて欲しくないしいらないって言ってるけど、元親は喧嘩友達に入るんじゃないかなあ。
そんなことを思って、二人の方を見ながらふっと微笑んだ。











‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

慶次君の口調がいまだによくわかっていない。
そしてアニキの上着の裏地は花柄なんですよね。
アニキ変なところで可愛いんだよなあ
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ