BASARA

□毛長
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《心臓の音を聴かせて》

(※アニキが捕虜)


「俺の事が気に喰わねぇってんなら、こんな、回りくどいことしてねぇでとっとと殺せばいいだろうッ!」


後ろ手に縛られた鬼が切れ切れに叫ぶ。だが構わず中を穿ってやった。
鬼が啼く、啼く。我はこの声が聞きたかった。啼いて泣いてもう何も考えられないような所まで追い詰めてやりたかった。


「ッ、ああっ、聞いてんのか、毛利!」

「本当は死にたくなどない癖によく言うわ」


鬼が逆上するような言葉をわざと選んで口に出す。
案の定隻眼の奥に怒りの炎が燃え上がるのが見て取れたが、腰を打ち付けてやればすぐにその炎はどこかに行ってしまった。代わりにうっすらと涙が滲む。


「ぐっ、あぁ、あ!」

「さっきまでの威勢の良さはどうした」


けしかける。言えばこの鬼は必死にこちらを睨み付けようとしてくるのだ。その反応が我を愉しませる事に気付かない鬼の愚かなことよ。


「それともあれは空元気であったか。貴様は大言を吐くのが常であったな」

「はっ、そういうアンタこそ、でけぇ口叩いてた癖によォ…っく、俺一人に随分てこずってたみてぇじゃねえか」

「それは貴様を生かして捕えるためよ」


この為にな。
囁いて耳朶を甘噛みしてやれば鬼は首を捻って我から逃れようとした。その首筋に噛みつく。それから舌で舐め回してやった。


「うぁ…っく、アンタは、一体俺をどうしたいんだよ!」


戸惑い上擦った声に体温が上がる。答えずに腰を揺らし続けてやれば鬼は先程より甘い声を出すようになった。もっと愛撫してやればこの鬼はそれだけ早く快感に溺れるようになるのだろうか。


「っん…おいっ、答えろよ!毛利!ッ…ふ、うぁあ…あっ」

「答えたところでどうにもならぬであろう?今の貴様にはな」


首を捻った事で浮き上がった鎖骨に唇を落とし、内側から外側に向かって舌を這わせた。びくりと震える、火照って赤みを帯びた白い肌。もっと触れていたいと思った。


「鬼が聞いて呆れるな」


腰を動かしながら今度は胸元への愛撫を繰り返す。唇で、舌で、手で、指先で。もう反論は返って来なかった。


「あっ、は…ッ、うあっ」


決して我の顔を見ようとはしない癖に(自分の顔を見られたくないのだろう)、我の動きを不安そうにちらちらと目で追うのが可笑しくて愛しくて、思わず頬に口付けた。肩を竦めて小さく俯くだけで抵抗はされなかった。嗚呼、それでまた我の心は弾むのだ。


「毛利ッ、そういうのは…よ、好きな奴にやってやるモンだろう?いくらアンタが色恋沙汰に疎いっつったって、それぐらいわかんだろうよ、なあ…っ!」

「当然知っておる」


だからやったのだ、と言ってから、この口数の多い鬼の口を塞いでやった。思っていたよりも唇が柔らかい。舌を入れたら噛まれるかと思ったが、口の中で舌が舌に触れないよう逃げ回るばかりで全く噛まれなかった。随分と可愛いらしい反応をすることだ。


「ん…っく、はあ…」

「まるでどこぞの姫でも抱いておるような心地ぞ。
…嗚呼、そういえば貴様も昔は姫と呼ばれていたのであったな」


聞こえているのかいないのか、必死に息をしようとする長曾我部にもう一度口付けた。揺さ振る度にくぐもった声を漏らしながら腰を引いて逃げようとするのが堪らない。腰を掴んで逃げられないようにしてやったら、はっとした表情でこちらを見上げて来た。


「っ…あぁ、いやだ!」


唇を離した途端に高い声で放たれた拒絶の言葉に酷く興奮した。腰を掴む手に力が入る。


「やっ…うあっ、いやだ、毛利!」

「何を言おうと無駄ぞ、長曾我部」


低く、低く囁く。駄々を捏ねる子供のように厭だと繰り返す長曾我部にわからせてやる為に。
それでも我の動きに堪えられなくなってきたらしい長曾我部は、激しく肩を跳ねさせると掠れた声で泣き叫んだ。


「あぁッ!や…ッ、はぁッん、ああ…!」


逃げようと藻掻く上半身とは裏腹に、熱を持った中が苦しいくらいに締めつけてくる。自分でもそれがわかるようで、長曾我部は泣き腫らした瞼で青い目を隠すと肩に頬がつく位に真横を向いた。


「恥ずかしいのか?」

「…っ!」

「見たくないと言うのならそれでもよいが」


腰を引き寄せて奥の方を抉ってやる。


「やッ…あ!!」

「我は何が起きているかわからぬままに身体を好きにされる方が不安だと思うがな」


弾かれたように振り向く瞳と目が合う前に、引き寄せた腰を好きなだけ揺さ振ってやった。


「あぁっ!!うっ…く、ああ、ひぁッ…!」


一気に中が締まる。びくんと胸が反って、それから力の抜けた肩と背中が床に触れる音がした。今ので達してしまったらしい。
我もまた中に放つと、長曾我部の上に倒れ込んだ。別にこちらは力が入らなくなった訳ではない。蛙の潰れたような声を出す長曾我部の背中と床の間に手を差し入れて、しばらくその体温を感じていた。


「アンタ…軽くねぇか?」

「うるさい」


思ったより立ち直りの早い鬼には頭突きを食らわせて黙らせた。体を横に向かせて、背中にぴったりとくっつく。なんだか妙に安心した。


「…なあ毛利」

「何ぞ」

「手首、痛ぇんだけど」

「そうか」

「外してくれよ」

「捕虜にかけた縄を外す筈がなかろう」


ピシャリと言えば鬼は小さく嘆息した。意外と反論が少ないのは疲れているからか。


「…まあ、緩くしてやらぬ事もないが」

「本当か?」

「貴様の心がけ次第だな」


先程の行為を思い出させるように首筋にふう、と息を吹き掛ける。途端に強張った肩をゆっくりと撫でて、今日はもうせぬよと言ってやれば、アンタのそういうところが嫌なんだと怒鳴られた。






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最初の方と最後の方でテンション(?)が若干違うのは書き終えるのに無駄に時間がかかって力尽きたからです。
微妙に甘えてくる毛利とかいいなと思うんですがどうでしょうか?
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