戯け共
□一章
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「ちょっと待って!!何、何、何!?!?」
「消すのみ。」
その頃少し離れた場所で、全く何の関係もない少女が、山道を歩いてたまたまある話を聞いたが為に殺される運命となってしまっていた。
「いやぁあああ!!!何で!何であたし!!?
あんたらの機密情報なんて全く興味ないわよぉおぉお!!!」
妖怪か何かかと思ってしまう程俊敏な奴らに、その不運過ぎる少女、夏は喚きながら全速力で逃げた、のだが。
何故だろう、刺客らしき人間達は間違いでなければ夏のすぐ後ろに来ていた。
「いやあぁああぁあ!!!」
シュッと空気を裂く様な音がしたと思うと、夏の足の間をナイフが通って行った。
必然的に着物には穴が空き、足を少しかすったのだろう、傷口が熱くなっているのが分かった。
夏は、急に恐怖が込み上げて来て、大きな叫び声を上げた。
だが体力は違いすぎて。
簡単に捕まり木の幹に体を押さえ付けられ、首筋に小刀をあてられた。
殺される・・・!!!
そう思った。
「あんたらの事なんて私何も言わないから!!!」
「無駄だ、御上からは話を知った者は皆消せと命を受けている。」
小刀を首筋にあてられたまま、スッと引かれた。
血が流れるのが分かった。
次に小刀が滑ったら確実に首が飛ぶ。
青ざめた顔で夏は叫んだ。
「ま、待って!あんたらが殿様の息子を殺そうとしてるだなんて誰にも言わないから!!!」
その時だった。
ガサッと、背後の木の影で何かが動いた。
「誰だ!!?」
「・・・・・・あー・・・、居ちゃいけねェとこにきちまったなァ・・・。」
「た、すかった、」
夏は、恐怖の余り零れそうになった涙を必死に堪え、影から現れたボサボサの髪を掻く男を見詰めた。
あまり、頼りになりそうにはなかった。
「・・・話を聞いた者は、消すのみ。」
「おい女、お前のせいでおれまで狙われる事になっちまったじゃねェか。」
ボサボサの髪を掻く男は、溜息を吐いて夏を見据えた。
今にも襲い掛かろうとしている刺客など、何の気にもしていない。
「何でも良いからあんた、助けてよ!!!」
「はァ・・・。
女、小刀か何か貸せ。」
「は?」
「良いから何か貸せ!!」
目の前には、まだ夏の首を飛ばそうとする男が一人。
小刀はまだ、首筋に在る。
夏は在りもしなかった勇気を振り絞って、裾から小さな刀を取り出し、高く投げ上げた。
「小賢しい!!!消せ!!!」
刺客が男に何人か襲い掛かり、夏の目の前の男もまた、夏の首を飛ばそうと刀を引いた。
「女なんて名前じゃない!!」
「じゃあ、何だよ!!!」
「消せ!!!」
男が、夏の小刀を掴んだのが見えた。
「夏って言うの!!!覚えとけ!!!!」
首筋に小刀が斬り込まれる。
そう感じ、夏はギュッと目をつむった。
が、しかし。
衝撃は来なかった。
「座ってろ。」
無理矢理木の根本に座らされ、夏は目を開けた。
見えたのは、刺客共の死体だった。
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