振り/小説

□届いていますか?
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「なぁ三橋ー」


昼休みのガヤガヤとした教室で
田島は三橋に声をかけた。



昼ご飯のパン(3コ目)をおいしそうに食べていた三橋は田島に気付いて



「う、ん!どした、の??」



パンを急いでごくんと飲み込んだ三橋は焦ったように一生懸命返事をする。




((可愛いなぁ…))





みんな、少なくとも9組の野球部らは
この三橋の仕草がたまらなく可愛いと思っている。



「三橋ー喉つまらせんなよー」


思わず三橋の頭を撫でながら泉は笑う。


普段、なかなか笑わない泉は三橋だけにこの優しい笑みを向ける。



「だ、だいじょぶ、だよっ!あ、りがと、いずみ、くん!」



「おー」


泉に心配して貰ったのが嬉しかったのか三橋はフヒッと泉に笑い返した。



それに照れてか泉は三橋から目線を外すため、手に持っていたジュースをごくっと飲み込んだ。




その時



「ぅをっ!、田島く、どう、したの?」


「ん〜?なんか寒いな〜って思ってさ!」



泉が少し目を離した瞬間に田島は直ぐさま三橋に抱き着いていた。




(あの野郎…)




寒いといいながら三橋に甘えるように抱き着いている田島は
ひそかに泉から睨まれていることに気付きもしなかった。




「あぁ〜三橋あったけぇな〜!」


「そ、そうな、の?」


「うん!三橋って超あったかい!子供体温だから??」


のんきに田島は話していると泉は負けじと



「でも三橋って手だけはすっげー冷たいんだぜ?」



「ふえっ?」



三橋の手をとり、その手を自分の頬にぴたっとくっつける泉。



「な?」



泉は自分の頬に感じるひんやりとした三橋の手を温めながら

にこっと笑った。


「う、ん!お、おれみんな、から、言われる、よっ!」


「そ?」


コクコクと頷く三橋。



やっぱりその姿は可愛くて

泉と田島はそれぞれの想いを添えて
優しく三橋の頭を撫でる。



“好きだよ”と




いつか、誰よりも先に


君へ届くように。





         end

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