神の子
□世界の果て
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『……そういえば、どさくさに紛れて言っちゃった……』
最期だから、って思って出した言葉に【僕もだよ】と返してくれた。
それなのにもう会えないんだよね……。
また会えると言ってくれたけど……。
『哀しいから期待はしないでおこうかな……。』
そう思うとまた泣き出してしまいそうで、胸がきゅっと苦しくなった。
『…………会いたいな。』
屋上に大の字に寝そべってみると、あっちの世界とはまったく別物の青い空が視界一杯に広がる。
なんとなく、こっちは本物だなって思える。
試しに人差し指を青空に向けてみる。
パチッとなにかが弾ける音がしたその直後、ハトくらいの大きさの神鳴<カミナリ>鳥が羽ばたいて行った。
『やっぱ戻らないよね……』
小さく落胆しながら再び起き上がる。
これ以上深雪を待たせるのは宜しくないしね。
屋上の扉を静かに閉めて深雪の病室のある階まで階段を降りる。
深雪も丁度手続きを済ませたみたい。
『おまたせ!』
深雪「!……うん。荷物ももともと無いようなもんだったから仕度も一人で終わったよ。」
『そっか。じゃあ行こ?
なんだっけ、あの院長の娘さんがお詫びかなんかで私たちに別荘を貸してくれるんだったよね?』
深雪「そうそう!私たちの努力を糧に貯めに貯めた金で買い取った別荘を貸してくれんだってさ。」
はい地図。と深雪からコピーを受け取って看護婦さんたちからの見送りも無いままに病院を後にした。
『じゃあまた、新しい生活が始まるね……。』
深雪「孤児院の子供たちも一応全員声はかかってるから戻ってきたい子は戻ってくるらしいよ。」
『あはは、それは寂しくもなるし賑やかにもなるね!』
元通り、になんて望んでないけれど、やっぱり変わっていく事柄に寂しさを覚えないわけでもない。
『(……私自身の変化も、そういう風に考えられたらいいんだけどね)』
夕暮れの一本道を歩きながら深雪が小さく話しかけてきた。
深雪「春菜、少し前と雰囲気違うね」
『そう?……でも、沢山変わった部分はあるかな。
自分を取り巻く環境を前より嫌ってないし、…………前より自分のこと好きかも。』
深雪「……うん、やっぱり変わった。
前だったらこんな難しいこと言う子じゃなかったし?」
『あ!バカにしたでしょ!』
深雪「そう受け取ってもらってもいいですことよー♪」
『もー!』