みりあん!(仮)

□Y 泉の再会
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夕食の席では、アドリアンは熱っぽく語り続けていた。

「ミリアンは本当にすごいよ、もう奇跡だね。
君達も一度聞いてみればわかるよ、彼はモーツァルトの生まれ変わりだね」

「そんなことないって…」

声が大きいものだから、僕は焦って辺りをキョロキョロと見渡す。

アランとマークはもちろんのこと、周りの生徒も特に反応を示していない。
たまにチラリとこちらを向く顔も、アドリアンだと確認すると親しみの込められた苦笑を浮かべて受け流す。

アドリアンが話し疲れた隙を見て、アランは冗談めかした表情を浮かべて僕に笑い掛ける。

「だいぶ暑苦しいだろ、こいつ?」

「ちょっと、人聞き悪いこと言わないでよね〜」

アドリアンは反論する。

「僕は音楽のセンスがある人を放っておけないんだ」


アランは呆れた様子で返す。

「それってアドリアンが構って欲しいだけなんじゃないの?」

「どうしてそういうこと言うかなぁ〜」

「何度も言ってるけどたまには外で遊ぼうよ。俺が構ってあげるよ」

「ぼ、僕は暑いのが嫌いなんだ。それにミリアンもピアノの練習したいって言ってるし」

アドリアンはにわかに焦った様子で僕に目配せをする。どう答えればいいのかわからず、僕は苦笑した。

アランは構わず続けた。

「まあそんな頑固になるなって。明日お昼の後に中庭の木の前に集合で」

「マークも来る?」と尋ねると、「考えておく」と神妙な面持ちで答えた。

「僕は絶対に嫌だね。第一、日焼けはファッショナブルじゃないし」

アドリアンは食べかけのトレイを持ち、憮然とした表情でスタスタと行ってしまった。


***


「アドリアンって本当に不思議な人だね」

「ああ。だいぶ変わってるね。もう4年も友達やってるけどいまだに掴めないよ」


夕食の後、僕達は寮の部屋でゴロゴロしていた。

アランは猫じゃらし片手にモーツァルトと遊んでいる。というよりは、遊ぼうとしている。
モーツァルトはチラ、とアランを見やると興味がなさそうに隣のベッドに移動する。

その冷たい仕打ちを受け、アランは「ああもう」とそのままベッドに仰向けに倒れ込んだ。





「明日アドリアン来るかなぁ」

消灯後の薄暗い天井を眺めながら、僕は半ば独り言のように口にした。


「絶対来るよ」

アランはひょこっと体を起こして確信に満ちた顔で僕に語り掛ける。


「そうなの?」

僕は「絶対に嫌だね」と答えたアドリアンの横顔を思い浮かべ、疑問に思った。

「来るよ。賭けてもいい」

アランの力強い言葉を受け、僕はますますアドリアンという人間がわからなくなった。


いつかはわかるようになるかな。

仲良くなれるかな。


そんな素朴な思いを巡らせるも、徐々に重くなる瞼に抗えず、ゆっくりと眠りに落ちて行った。


胸中に巣食う理由のわからない一抹の不安を、気のせいだと追い払いながら…



***
 

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