Book1.5

□せんせい!-1-
1ページ/1ページ



「いい加減起きなさいっ!!」

「…った」
「朝ご飯冷めるわよ!早く下りてきなさい」

はたかれた頭をさすりながら、へーい…と力無く返事をする。
女に逆らうとろくなことにならないっつーのは糞親父を見て学んだこと。
ノロノロと着替えて下へ下りれば味噌汁のいい匂いがした。

「頂きます」

ズズッと汁を啜れば口の中に旨みが広がる。

「あー…」

うまい。

「シカマル!早く行かないと遅刻するわよ!」
「へいへい」

母ちゃんの小言を背に家を出れば、起きたばかりなのに眠気を誘うポカポカ陽気。

「あー…昼寝してぇな」

今日の授業は昼寝決定だ。

ダルイ体を動かしてアカデミーの教室へ入れば、悪友のキバが待ってましたとばかりに話しかけてきた。

「オーッス、シカマル!」
「…朝くらい静かにしとけ」
「なんだよツレねぇなぁ」

グリグリと肘でつついてくるキバのことはもう無視。
眠気に勝てず机に突っ伏す。

「おーい、シカマル!シーカーマールー!寝るなって!すげぇ情報があんだよ!」
「…情報?」

それでもしつこく話しかけてくるキバに耳を傾けてやる。

「お、なんでも今日イルカの代わりに新しいセンコーが来るらしいぜ!」
「あぁ…そういやイルカ長期任務だっつってたな」
「そうそう!しかもな、そのセンコーがめちゃくちゃ美人らしい!」
「へー」
「へーっておまえなぁっ」

キバが声を張り上げたところで教室の扉がガラッと音を立てた。


「っ…!」


赤い長髪に青い瞳、この場に似つかない薄水の着物を羽織ったそいつからは、凛と澄んだ空気が放たれる。

誰もが言葉を失ったその相手はきっとイルカの代わりのセンコー。
美人だと言ったキバの言葉は嘘ではなかった。

俺も含め全員が全員そいつに魅入っていると、ゆっくりと教壇へ立ったそいつが静かに教室内を見渡す。
緊張にゴクッと唾を飲み込む音が聞こえてくる。

観察するように見ていたそいつがふんわりと笑って口を開いた。



「初めまして、反面教師です!」
「最悪だな!」



予想外の言葉に思わずツッコミを入れてしまった自分の口をハッと覆った。
ジーッと突き刺さるそいつの視線。

恐る恐る顔を上げ様子を窺ってみれば、目が合った途端そいつはニンマリと笑った。

(っ…、最悪だ)

嫌な予感がヒシヒシと伝わる。

「俺の名は蒼綺。イルカさんが不在の間、君たちの担任を任された。よろしくな!…奈良シカマルくん?」

「っ……!」



たった一言のツッコミがまさかこんなことになろうとは。

日々是平穏なり。

平和だった俺の日常はガラリと変わるのだった。






END.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ