Book1.5

□せんせい!ー7ー
1ページ/1ページ



「よーし、準備出来たなー?」


薬の臭いがツンと鼻につく此処は実験室。
今日の授業はカエルの解剖だ。
こういった動かなくては成り立たない授業はくそめんどくせぇ。


「今日はカエルの解剖をする。カエルっつってもただのカエルじゃあない。なんと忍カエルだ!」


籠に入れられた忍カエルを見ると、出せとでも言うように籠の蓋をガンガン叩いている。
蒼綺に捕まったのが運の尽き…。
ゴシューショーサマ、と大して思ってもないことを口にして、窓の外をぼんやり眺める。


あぁ、雲はいいよなぁ。


他の奴らも何だかボーっとして心此処に在らずなようだが。


珍しいな…。


蒼綺教のコイツらが蒼綺の授業でボケッとするはずがない。


正面に座るキバを見ればある一点を目で追っている。


なんだ?


視線を辿ろうとしたら。



「白衣姿も美しい…」


「…は?」



キバがうっとりと語り出した。


「オプションの赤フチメガネも似合ってる…」

「………」



ナルホド。

蒼綺教の野郎共が思いを馳せるのはやっぱり教主だったようだ。



「てめぇら」



そんなことを思われているとも知らず、低い声で不機嫌丸出しの教主さま。



「俺の授業でボーっとするなんざ、いい度胸してんじゃねぇか」



メスを光らせる蒼綺に、キバがゾクリと光悦した顔を見せる。



「いつまでもボケッとしてっとてめぇら解剖すっぞ!」


「「「「はいっ!喜んで!!」」」」



即答で、丸裸にしてください!とほざいたキバ始めクラスメート共は目を輝かせる。

もちろん蒼綺はただ脅しのつもりだったんだろうけど。



「…は?なにコイツらキモイんだけど」



連中を指差してくるりと俺を振り向くその眉間には、怪訝にシワを寄せている。



「いや、俺に言われても」



奴らがキモイのは今に始まったことじゃないし。



「つぅか原因あんただし」

「はぁ?」



眉間のシワを更に深くしながらも首を傾げる蒼綺は、蒼綺教の色メガネがなくてもどこか色っぽい。



「ハァ…。あんた、ちょっとは自覚しろ」



訳が分からないと考えることを諦めた蒼綺は、頭上に浮かぶハテナマークをシッシッと取っ払った。



「んじゃー、解剖始めっぞー」



クイッとメガネを持ち上げてみせた蒼綺に、



「「「「はいっ!!!!」」」」



目を輝かせて服を脱ぎ始める野郎共。



「ふっざけんなっ!!てめぇらじゃねぇ!!!!」



イライラしてメスを投げつける蒼綺に嬉々として立ち向かうクラスメートたち。




その横でやっとこさ蓋を開けた忍カエルが、そそくさと逃げていくのを俺は黙って見送ったのだった。








END.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ