お題
□アイス食べる?
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《シカ→ナル←カカシ》
「あ"あっちぃー…」
夏も真夏。猛暑日。炎天下。
何が悲しくてわざわざ外を出歩かなくてはならないのか。
ぶちぶち文句を言っても仕様のないことは百も承知だが、文句の一つや二つ言わせて欲しい。
せっかくの任務のない休日に、母ちゃんのパシリって。
しかも美容の為の顔パックの買い物とか。
「ありえねぇー…」
涼しい縁側で風鈴の音を聴きながら氷アイスでも食べてのんびりしようと考えていた数分前の自分にグッバイ。
一度目を付けられてしまえば逆らうなんて自殺行為。
素直に受け入れてさっさと終わらせてしまうに限る。
「ったく、めんどくせー」
滲み出る額の汗を拭って、ため息を一つ落とした。
「えーっどうしよっかなー」
目的の物を袋でぶら下げ帰路へつけば、道中腐れ縁のナルトが眉間にシワを寄せて唸っていた。
傍にはアイツの元担当上忍。
このクソ暑い中でもマスクは外さない。
変な執念を感じる。
「ね、たまにはウチでラーメンご馳走してやるって。だからおいで?」
あの上忍はナルトを狙ってる。
当の本人は全くと言っていいほど気付いていないが、多分、ナルトが第七班にいたころから。
昔はそれほど分かりやすくはなかったが、ナルトが三忍の自来也先生と里を出て帰ってきた頃から分かりやすくアピールが始まった。
幼い時は我慢してたけど大きくなったからいいかなー、みたいな?
ラーメン口実に家連れ込んでナニするつもりだっての。
ったく、油断も隙もありゃしねえ。
「ナルト」
「あっ、シカマル!」
オレに気付いたナルトは笑顔でブンブンと手を振った。
「なにやってんだってば?」
「母ちゃんの買い物。ナルトは?」
「散歩してたらカカシ先生に会ってさ!今ラーメン誘われてんだけど考え中!」
「散歩ってお前…、このクソあちぃのによくやるな」
この炎天下でもいつもの笑顔に曇りはなくて。
「おう!でもさすがに今日は暑いってばね!」
よく見ると汗が頬を伝っていた。
「あー…ナルト。オレん家アイスあっけど…来るか?」
「マジで!?行く行く!行くってばよ!」
二つ返事で答えたナルトは満面の笑み。
チラリと奴を見れば無表情でオレを見ていた。
なにそれ、睨んでる?
忍と言えど感情を出しすぎないのも相手には伝わらないから考えもんだな。
「ごめんってばよカカシ先生!ラーメン好きだけどさすがに今日は暑いからパスだってば!」
「んー残念。じゃあまた今度ネ」
口調は柔らかく、目は笑っていない。
こっわ。
じゃーねーと言って奴に手を振ったナルトは、正面に向き直ってニシシと笑った。
「やっぱ夏はアイスだってばね!シカマルに会えてラッキー!だってば!」
「ったく、現金なやつ」
とか言うオレもアイツと同じ。
アイスという名の甘い誘惑。
こちとらアカデミーからの片想いだっつの。
むざむざ譲ってたまるかよ。
END.