宝箱(文)

□ソニック/クレイジー(ツナヒバ)
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音速を超える速さで飛びたい。そう願う小鳥はいるのだろうか。
光速を超える速さで泳ぎたい。そう願う魚はいるのだろうか。
綱吉がそんなことを考えるのは、いつも雲雀の寝入った顔を見遣る時だった。
それは事後であったり、学校の屋上に彼を探しに来て偶然にであったりするのだが、とにかく雲雀の寝姿というものは独特の静けさを纏っていて、それが逆に綱吉にあらゆるものの速度を想わせるのだった。
例え起きていても雲雀は大概穏やかだが、その実恐ろしく滾った行動力やら怒りやらを内包しているものだから、正しく『雲』とはよく表した気ままな動きで綱吉を困惑させ魅了している。
しかし、−−−いや、だから。
だからこそ怖いのだ。
静かに眠る彼は、まるで再び永遠に彼に触れないのではないかと思わせて。
時には速く、時にはゆるり。音速でもなく光速でもなく、雲を追いかけるだけのスピードを持ちえたい小動物は、目の前の遠い沈黙が恐ろしいのだ。
だから、つい、乱暴に口を塞いで起こしてしまう。
突然不躾に(しかもかなり不愉快な方法で)起こされた雲雀は、しかし涙目になっている綱吉をいつものようにトンファーで殴りはしない。
一言、思い切り不機嫌に「おはよう」と言い放つ。
綱吉にとっての世界は、またその呪文で動き出すのだった。
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