文(リボーン)
□右拳
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思ったより腕力あったんだな。
押し返す腕を受け流しながら、獄寺は眼下の綱吉に対する畏敬の念を更に深くした。
それに粘り強い。
初めはいつもの放課後の綱吉の席、一歩ずつ迫る獄寺に圧されて校庭を臨む窓側の隅へ至るまで結構な時間がかかった筈だが、綱吉は諦めることなく、嫌、嫌、と手を押し返し続けている。
それでも人を傷付けたことが無い、喧嘩慣れのしない綱吉には獄寺の手を手荒く撥ね退けることはできなかった。
「ここまで来てまだわかんないんスか?」
突然落ちてきた言葉らしい言葉に、綱吉がびくりと目を上げる。
「誰も助けには来ないし」
がちがち鳴る奥歯のせいで揺れる目が教室と廊下に縋る。
「俺に止める気は無いし」
にやりと笑う目に燃える火が眼下の愛おしい獲物を味見する。
「10代目は俺を拒めない」
肌蹴る程度で殆ど乱していなかったシャツの隙間から手を抜き、綱吉のベルトに手をかけた時。
ガッ、と鈍い音がして獄寺の顔が右に傾いだ。
信じられない思いで綱吉が自分の右手と、目の前の顔を交互に見る。
「ご、めん」
反射的に謝ってしまう綱吉の前で、横髪に隠れて見えない横顔がひくつく様に肩を揺らしている。
振り向いた瞬間、音が鳴りそうな強さでたくさんの飾りを巻きつけた指が綱吉の髪を掴んだ。
高い声が上がるのにつれて、やっとげらげら笑う顔が見えた。
「最高に抵抗してこれでしょ?10代目。やっぱりあなたは・・・」
今度こそ、下着ごと綱吉のズボンが片足で蟠る。
叫ぼうと開いた口は、節くれた指の進入を許すだけだった。
END