文(リボーン)
□モスキート
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ぐちゅ、と意地悪く音を立てながら雲雀がそれを引き抜くと、小さな体が大げさな程強ばった。
内側から零れ落ちる感覚に、最中には堪え続けていたすすり泣きが始まる。
今日も今日とて綱吉は雲雀にとっつかまっていた。
のみならず、凌辱の限りを尽くされていた。激しい抵抗(綱吉の主観による)も虚しい綱吉は一人ごちる。
ひどい。
悔しい。
オレが何をしたって言うんだ。
ドカッ(ぼて)
「めそめそうるさい。」
蹴り落とされた!
なんなんだよこの人。誰のせいでうるさくなったと思ってるんだ?
もう怒った。
シメる。
十代目(就任する気ないけど)を舐めるなよ。
動かない体に鞭打って通学カバンまでの長い道のりを征し、ごそごそ中を探る・・・これだ!
シャマルにもらったそれ。
こわ〜い先輩の無体と周囲の目に毎日瀕死の体、薄幸の少年たる自分を憐れんでもらうべくとうとうと語りに語り、うるせえ分かった、と保険室から自分と一緒に投げ出された物。
中身は不明だが、とにかく効き目は強烈らしい。
ここで犯られたが58日目。
覚悟しろひば・・・
「あがっ!」
「小動物の匂いが付いたんだけど。きれいにしてよ。」
ひろい!
れっらいゆるひゃんひゃらな。ひゃくろひろひひゃりひゃん!
綱吉の右手がどうにかカプセルを開ける。
小さな虫が飛び立ったのを横目で確認して、にんまりと笑った。
これでしばらく待てば良い。
ぴちゃ、ぴちゃ、と言う水音に混じって苦し気な吐息が漏れる。
しばらくぼんやりと校庭を眺めていた雲雀が、眼下の茶色い頭に目線を落とす。
それは、ヒマワリの種を頬張るハムスターを思わせた。
と、うつ向いた拍子に前髪が鼻先に当たった。
そろそろ髪を整えなければ。
風紀委員長たる雲雀は思った。
こんな風に肩に髪がかかっている生徒は・・・・・・
肩?!
音もなくトンファーが綱吉の首に当たって、両手を上げた綱吉が口を離して恐る恐る目線を上げると、
「ねぇ、何の真似?」
光輝かんばかりに美しい黒髪を腰まで下ろした雲雀に心臓まで射抜かれた。