文(ハガレン)
□出張軍部で春の嵐
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アルエドベースですがロイエド表現を若干含みます。苦手な方はスルー。
エドは今日出てきません。どうせ家でどうでもいいことを真剣に研究してると思います。
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その場に似つかわしくない優しげな相貌の青年が一人、中央司令部の奥深い一室の扉をノックした。
「こんにちは、マスタング大佐!」
「やあアルフォンス。今日も爽やかかつハートフルなムードを醸し出しているね。私のお株を奪わないでくれたまえははははは。時に、私が召集したのは君ではなくお兄さんだったかと思うのだが?」
殊更ににっこりと、アルフォンスは微笑む。
「迷惑だから気軽に兄さんを招集しないで欲しくって、マスタング大佐にお願いしに来たんです。大迷惑だから。」
「どぎついな、さすがはエルリック兄弟の片割れ。まあどちらが先でもいい、今日は君を借りたいと鋼のに頼むつもりだったんだ。君のことは鋼のに話を通さないわけにいかないからね。」
「お断りします。」
にこにこにこ。
「即断か・・・。報酬はあるぞ、鋼のを捕まえてあげよう。兄さんを捕まえられたら一発、なんだろう?」
「お引き受けします、大佐。でもどうしてそれを?」
「早っ!・・・鋼のが毎日毎日、君のトラップについて熱く語って行くのでね。確かに見事だ、あの鋼のを何時も拿捕しているのだからな。そこで後学のためにも軍にはない君の独創的なトラップスキルが欲しいのだよ。場合によっては士官学校で講師も頼みたい。」
「ふふ。兄さんたら大佐にまでボク自慢か。良いでしょう、今までのトラップ作成法と検証レポート全てを差し上げます。暗号化してあるけど大丈夫ですよね。」
「ああ、私とて錬金術師の端くれ。解読くらいしてみせよう。では明日の夜10時にここで鋼のとトラップレポートを交換、良いかね?」
「はい。ボクはこれからレポートをまとめなおさなきゃ。」
「では楽しみにしているよ。」
にこにこかわいいアルフォンスが部屋を辞して、ロイはどっと汗が流れるのを感じた。
「つ、かれ・・・た・・・・・。」
机に突っ伏して脱力感を満喫する。
春の陽だまりのような外見から押し寄せるアルフォンスの苛烈な敵意の嵐は、気を抜けば皮膚のどこかが切り裂かれそうな圧力を与えていた。
なぜあの兄弟は揃いも揃ってパワーを使うんだ、対面するだけで。
暫らく動くまい、とロイは机に額をこすりつけた。