文(ハガレン)

□兄さんのタイプ
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9月の穏やかな陽が降り注ぐ午後。

良い天気にうきうきしているアルフォンスに引き比べて、
ハッキリ上機嫌な天候に却って脱力したエドワードは食卓に頬杖をついて全身の倦怠感を満喫している。
ヤル気が一切感じられない。
やる気があろうと無かろうとこの家の人間は10割ニートだが。

「兄さん、この間すごいお爺さんと歩いてたね。」

ふと思い出したアルフォンスが、何とは無しに眺めていた「特集!ミュンヘン・オクトーバーフェストで飲み倒れ」から目を上げてエドワードに話を振った。
雑誌はアル中ハイデリヒが買ってきた、ビール祭り「オクトーバーフェスト」についてのものだ。

「んー?いつだ?」

「えと、一昨日のお昼ごろかなぁ。身なりの良い、上品な白髪の。」

説明に身振りを加えて、一生懸命思い出す顔のアルフォンスが愛らしい。

「あー・・・?あー。」

思い出す努力をしているようには到底思えないエドワードは、それでも思い当たるフシを見つけたようだ。
可愛らしさがコケティッシュなアルフォンスとは似ても似つかない態度の悪さで、ふてぶてしい半目を開こうともしない。
心の底からダメな大人だ。

「ねぇ、何なの?変わり者の兄さんにできたお友達?」

兄さん、趣味があるようにも思えなかったのに一緒に何かする仲間ができたのかな。
えへ、何か嬉しいよ。年が離れた友達だって何だって。

わがままアルフォンスだって純粋に兄さんを心配している。

「あー。」

機械鎧の頬杖が限界を迎え、とうとう片頬が食卓にべったりとついた。
彼は自分の話題に興味が無い。

「あははアルフォンス君。多分僕わかった。」

それまで目をギラつかせてオクトーバーフェストの出店リストにマーカーを走らせていたハイデリヒが、一段落したのか話しに入ってきた。

「えっハイデリヒさん、知ってるの?」

「その人自体には面識ないけどどういう知り合いかは、ね。昨日はあれ、帝国参謀本部の人だったよね。今日はなんかすごい汚い人だったけど。エドワードさんの好みってわっかんないなー。」

ね、と首をかしげながらエドワードに向けて拳を突き出す、
人差し指と中指の間に親指を差し入れて。

「・・・もうオチが見えてきてボク大暴れの予感なんだけど、一応聞くね。兄さん、どういう知り合いで何してたの?」

「出会い頭でガチンポ勝負。」

「うおおおやっぱりか!!」

ガスッ!

若さ溢れる14歳の右ストレートは惜しみなく、他に目もくれずエドワードにだけ向かう。
彼の愛の姿そのままだ。
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