文(ハガレン)
□Ein Prosit
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Ein Prosit !!!!
ガァン!!
乾杯の叫びと共に特大ジョッキをぶつけあって半分まで飲み干す。
「うっめぇぇーーー!!!」
このために生きてるなー!とご満悦のハイデリヒ。
その辺にいた酔いどれオヤジが
「おう、カワイイ顔して分かってんなぁ兄ちゃん!」
とプロージッ!の声と共にまたジョッキを合わせる。
「えへへー。僕ね、こないだ生き返ったんれすよー。こんろこそ人生満喫しなきゃねー。」
「そーかそーか生き返ったのか奇跡だなぁ。」
「奇跡じゃなくて黒まじゅちゅ・・・あれ、くりょまじゅちゅ・・・あれ??」
こちらも既に酔いどれである。
周りのオッサンも皆酔いどれなので問題は無いが。
あまり表沙汰に出来ないことを暴露しているハイデリヒに苦笑するエドワード。
こちらもアンニュイながら恐ろしい早さでジョッキを傾けている。
ジョッキは常に0か180度の傾きだ。
なぜか生身の左手はハイデリヒの背中に添えたまま。
それに気付いてむっとしたアルフォンスが、エドワードとハイデリヒの間に割り込んで座った。
ふーっと毛を逆立ててハイデリヒに牙を剥く。
頭を撫でられて終わりだが、背中から手が離れたことに安心し、んっく、んっく、と喉を鳴らしてピンクに染まった頬一杯にビールを含んで飲んでいる。
思わず兄がぷっくりした頬を横からつついた。
「ぷはあっ。もう、兄さん!なんなのさ。」
「だって・・・お前かわいいんだもん。」
兄の言葉に酒も相まってますます頬を染め上げるウブな14歳。
あんなこともこんなことも熟知してなお変わらない、初々しい愛らしさは彼の持ち味だ。
ちなみにそんな会話を交わしていても二人の酒を飲むペースは全く落ちない。
一言喋るごとに特大ジョッキを一つずつ空けている。
顔色こそ変わっていないが、睫毛を伏せて息をつくエドワードが艶めかしい唇を開いた。
「なぁ可愛いアルフォンス、そこ座るならオレの代わりにハイデリヒの背中押さえといてやってくれよな。」
「なんで?ハイデリヒさん、酔っても潰れはしないもん。支えてなくてもちゃんと座って・・・」
いない。
いつのまにか席を立って、一段高いステージに上っている。
「あの野郎・・・!」
やんややんやと囃し立てるオヤジがステージ下に黒だかりだ。
ウェイターや料理人まで集まっている。
一頻り声援が収まったところで、ハイデリヒが徐にサスペンダーを肩から抜く。
おお〜〜〜〜
ステージ下から声が上がる。
次いで、足元に流し目を投げかけながらボタンを外し、シャツを脱ぎ捨てる。
しなやかな上半身に金の胸毛が豊満だ。
ほお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・
ため息が漏れる。
ビールを樽ごと持ち上げて一気に口に含み・・・
「はいっ水芸〜!!」
飲んだ分のビールが背中や脇腹の銃痕からぴーっと迸る。
BRAVO〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
酔っ払い達から歓声が上がり、おひねりがステージ上に山積みになった。
すげえ、どうなってるんだ。と声が飛び交う。
幸いな事に水源地の銃痕は胸毛と背毛で全く見えない。
「はは、押さえてないとアイツ、色々出ちゃうんだよ。」
へらへら笑っているエドワードをその場においてアルフォンスがステージに駆け寄る。
「もうっ!やめてよ!」
アルフォンスが渾身の一撃をハイデリヒの後頭部に与えて沈め、手際良くおひねりで銃痕を塞ぐ。
さすがに穴に何か入れる関係のテクニックは大したものだ。
また喝采とおひねりが増えた。